日本と米国は「同盟」ではない ―2017年2月10日の安倍・トランプ会談に寄せて

中西 治

2017年2月10日(日本時間11日未明)、日本の安倍晋三首相が米国の首都ワシントンでトランプ大統領と会談しました。

会談後の記者会見でトランプさんが「私たちの軍を受け入れてくれている日本国民に感謝したい」と語りました。

安倍さんは「強固な日米同盟がアジア太平洋地域の平和と繁栄と自由の礎である」と述べました。

1961年1月に制定された現行の「日米相互協力及び安全保障条約」第5条が尖閣諸島に適用されることが確認されました。

安倍さんは「日米同盟」、「日米同盟」と言いますが、本当に日本と米国の関係は「同盟」なのでしょうか。私はそう思いません。

このことを明らかにするためにここでは、幕末の「日米和親条約」の調印から今日までの日米関係を振り返り、現在を正確に把握し、将来を展望します。

第一に、私はこの期間を大きく次の3つの時期に分けます。

第1の時期は、1854年3月30 日(嘉永7年 (安政元年)3月3日)の「日本國米利堅合衆國和親條約」調印から明治維新、日清戦争、日露戦争を経て1911(明治44)年2月21日に「日米通商航海条約」が調印されるまでの57年間です。「不平等条約期」です。

第2の時期は、1911年2月から第一次大戦、ヴェルサイユ・ワシントン体制、世界経済恐慌、第二次大戦を経て1945年8月15日に日本がポツダム宣言受諾を発表するまでの34年間です。「帝国主義期」です。

第3の時期は、1945年8月15日から今日までの70年余です。私はこの時期をさらに次の4つに分けます。

① 1945年8月から1951年9月8日の「サンフランシスコ対日平和条約」と「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」調印までの6年余です。「米国をはじめとする連合国軍の占領期」です。

② 1951年9月から1961年1月の「日米相互協力・安保条約」締結までの10年弱です。「米国軍の駐留期」です。

③ 1961年1月から2015年9月19日に日本が集団的自衛権を行使するための一連の安全保障関連法を制定するまでの54年余です。「米国軍の駐留・日米相互協力期」です。

④ 2015年9月から今日までの1年余。「米国軍の駐留・日本の集団的自衛権行使期」です。

第二に、上記160年余の日米関係のうち最初の90年余(第1と第2の時期)は基本的に「対立関係」でした。

日本と米国はともに英国やフランスなどの先進国より遅れて近代化・工業化への道に入りました。日米両国が会いまみえた19世紀半ばに英国はすでに清国とのアヘン戦争に勝利し、中国の上海や南京などをはじめアジアの主要都市を支配していました。

19世紀後半から20世紀にかけて日本と米国が中国大陸に関心を持ったとき、残されていたのは中国東北から朝鮮半島にかけての地域でした。20世紀前半に日本はこれらの土地を奪取しました。最後は米国と戦い、人類史上最初の核戦争を体験しました。

第三に、上記160年余の後半70年余(第3の時期)は「米国が占領・駐留し、日本を軍事的に支配」しています。

2009年9月から2011年9月まで3年間続いた民主党政権が沖縄の米国軍普天間基地の辺野古への移転を阻止できなかったのは、その例です。鳩山由紀夫首相が沖縄に行き、県民に謝りましたが、日本国の最高指導者でさえ、その考えを実行できなかったのです。

2015年9月19日に一連の安全保障関連法が成立するまでは、「専守防衛」を掲げる日本の自衛隊は海外に行って武力行使することはありませんでした。

ところが、2016年3月29日に同関連法が施行されて以降、自衛隊が「集団的自衛権」を行使できるようになり、海外での武力行使や、米国軍など他国軍への後方支援が世界中で可能となりました。

2016 年11 月18日、アフリカ・南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されている陸上自衛隊に「駆けつけ警護」や「宿営地の共同警護」のために「武力の行使」を認める命令が防衛大臣から発せられました。

日本は「日本国憲法」に反して外国で戦争ができるようになりました。

第四に、現行の「日米相互協力・安保条約」は「同盟条約」であるのか、「否」かについてです。

この条約の第5条は次のように規定しています。

「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」

この条約は一見「相互防衛同盟条約」であるように見えますが、そうではありません。たとえば、本当の「相互防衛同盟条約」である「北大西洋条約」第5条は次のように規定しています。

「締約国は、ヨーロッパ又は北アメリカにおける締約国の一又は二以上に対する武力攻撃を、全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。従って、締約国は、右の武力攻撃が行われるときは、各締約国が、… 兵力の使用を含めてその必要と認める行動を、個別的に及び他の締約国と共同して、直ちに執ることによって、右の攻撃を受けた一以上の締約国を援助することに同意する。」

つまり、本当の「相互防衛同盟条約」は「他国に対する武力攻撃」を「自国に対する武力攻撃」とみなし、「直ちに兵力の使用を含めて必要と認める行動をとる」と規定しています。

ところが「日米相互協力・安保条約」で対象となるのは上記のように「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」だけです。「米国の施政の下にある領域」は対象外です。

なぜこのようになっているのでしょうか。それは1946年11月3日に公布され、1947年5月3日に施行された日本国憲法の第9条が「国権の発動たる戦争を永久に放棄し、国の交戦権を認めていない」からです。日本国憲法は締約国に対する攻撃を自国に対する攻撃とみなし、自動的に戦争に入るような「相互防衛同盟条約」の締結を認めていないからです。

第五に、「日米相互協力・安保条約」第5条が規定する「共通の危険に対処するように行動する」という「行動」とはいかなるものであるのかについてです。

同条約第5条が「尖閣諸島」に適用されることを最初に認めた米国大統領はオバマさんでした。彼は2014年4月24日に安倍首相との共同記者会見で次のように語りました。

「日本の安全保障に関する米国の条約上の義務に疑問の余地はなく、第5条は尖閣諸島を含む日本の施政下にあるすべての領域に適用されます。」

オバマさんはさらに日本の朝日新聞記者の質問に答え、「米国の立場は新しいものではなく、ヘーゲル国防長官とケリー国務長官が来日したときにも、米国の一貫した立場を示しました」と述べました。

また、米国のCNN記者の「大統領が言っているのは、中国が尖閣諸島に何らかの軍事侵攻を行った場合、米国が尖閣諸島を守るために軍事力の行使を考慮する、ということですか。」との質問にオバマさんは次のように答えました。

「私は安倍首相にも直接言いましたが、この問題をめぐって、日中間で対話と信頼構築ではなく、事態を悪化させる行為を続けることは、大きな誤りです。各国は国際法を遵守し、子供たちに向けて毒ガスを発射したり、他国の領土に侵入してはなりませんが、ある国がこうした規範に違反するたびに、米国は戦争に踏み切る、あるいは軍事的関与への準備を整えるべきであり、そうしないのは、米国が本気で規範を尊重していないということでしょうか。だとすれば、それは間違いです。」

オバマさんが言いたかったことは、「日米安保条約が締結されたのはオバマさんが生まれる前であり、第5条は日本の施政下にある領域を対象としてきた。だから私もそれを認めた。しかし、そこで起こる紛争に軍事的対応をするようなことはしない。私は問題を平和的に解決するために努力する。」ということでした。

オバマさんの「行動」は「軍事的対応」ではなく、「平和的解決の努力」なのです。

私は現実に尖閣諸島をめぐって何か事が起こったとき、米国は口では何か言うでしょうが、実際に事は起こさない、と考えています。それは米国がこの問題に武力介入すれば、中国との戦争、中国との核戦争になるからです。米国は日本の小さな島のために中国との核戦争を起こすほど愚かではありません。

それはトランプさんも同じです。トランプさんも安倍さんと同席した記者会見で中国との関係の重要性を強調していました。トランプさんも日本のために中国と戦争はしません。

オバマさんとトランプさんが恐れているのは、日本のために「中国との戦争」に巻き込まれることでしょう。

第六に、日本は今後どのような道を歩むのかについてです。

およそ160年間の日米関係を振り返ると、米国と付き合うのは「大変難しい」です。だから、「戦争」となったのです。

「戦争」は最初に仕掛けた方が悪いのです。米国人は「真珠湾奇襲攻撃」への「恨み」を忘れていません。日本人はその「罪」をいまも背負っています。

1951年の「日米安保条約」と1961年の「日米相互協力・安保条約」は、米国にとって「日本に米国に対する報復戦争をさせない条約」という側面もあるのです。

米国はいまも完全に日本を信頼していません。その証拠は米国が日本の国連安保理常任理事国入りを公然と支持しないことです。

戦争は悲惨です。人間と人間の殺し合いです。再び戦争をしてはなりません。

日本は韓国、朝鮮、中国、ロシア、米国など、すべての国と仲良くしなければなりません。

中国を仮想敵国とし、米国と組んで「抑止力」にしようと考えてはなりません。

他国との「同盟」に自国の運命を託すようなことをしてはなりません。

日本はかつて日独伊三国同盟にかけて米英オランダなどとの戦争を始めて失敗しました。

現行の「日米相互協力・安保条約」は最初の10年間の有効期間を1971年に終え、現在、日米いずれの締約国も、他方の締約国に対し、この条約を終了させる意思を通告すれば、1年後に終わります。

私はこの条約を廃棄し、新たに「日米平和・友好・協力条約」を結べば良いと考えています。

日本が世界に示すべき道は「軍事同盟」への道ではなく、すべての国との、すべての人との「平和・友好・協力」への道です。

ここまで書いて送信しようとしていたら、朝鮮の「ミサイル発射」のニュースが流れ、安倍さんとトランプさんが「日米同盟」を連呼しています。「胡散臭い」と思っています。