二酔人四方山問答(32)

岩木 秀樹

B:ところで、イスラームの教義はどのようなものなの。

A:最も大事なテーゼは、「アラーのほかに神なし、ムハンマドは神の使徒なり」だ。

B:その言葉はよく聞くよね。

A:この言葉をイスラム教徒2人の前でアラビア語で唱えると、イスラーム教徒になることができるとされる。

B:それくらい重要な言葉なんだ。

A:ムハンマドによって創唱されたイスラームはアラーを唯一の神とする厳格な一神教だ。神の唯一性とムハンマドが神の使徒であることを信ずる者がイスラーム教徒と言える。

B:なるほど。

A:「アラーのほかに神なし」は、神と人間との仲介者のない垂直的な関係を規定するもので、「ムハンマドは神の使徒なり」は、ムハンマドを指導者とした共同体形成の観点から、人間同士の水平的な関係を規定するものと、イスラーム研究者の小杉さんは言っている。

B:具体的に、イスラーム教徒が信ずるべきことや行うべきことなどはあるの。

A:それは六信五行と言われるもので、六信とは信ずるべき六項目、五行とは行うべき五項目だ。具体的には六信はアラー、天使、啓典、預言者、来世、予定で、五行は信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼だ。

B:ずいぶんたくさんあるね。ひとつひとつ簡単に説明してよ。

A:アラーは唯一の神でこれは何度も説明したね。天使とは神と人間の中間的存在で様々な役割を果たす。例えば、ジブリール(ガブリエル)はムハンマドに神の啓示を伝えたりした。

B:やっぱり天使には羽が生えているの。

A:生えているのもいる。イスラームの天使もユダヤ教やキリスト教のそれとほぼ同じだ。 終末が来るとラッパを吹く天使がいたり、良い行いと悪い行いの帳簿を付ける記録係の天使もいる。

B:次の啓典はコーランのことで、預言者はムハンマドのことでしょ。

A:そう。でもこれだけにとどまらない。預言者ではムーサー(モーゼ)、ダーウード(ダビデ)、イーサー(イエス)らも入っている。また啓典にもムーサーの律法、ダーウードの詩篇、イーサーの福音書なども入っている。

B:だからユダヤ教やキリスト教はイスラームにとって、啓典の民と言われるんだね。

A:その中で、ムハンマドとコーランは最後にして最良の預言者であり、啓典と考えられている。

B:来世と予定とはどういうものなの。

A:人間の暮らす現世はいつか終わりを告げ、最後の審判が行われた後に来るのが来世だ。具体的には生前の行為によって楽園または地獄に行くことになる。予定とはこの世に起こることはすでにアラーによって決められているということ。

B:予定とは全て決められているの。

A:実はそれは今までずいぶん議論されてきたらしい。人間の自由意志を強調するイスラーム学者も存在した。

B:ふーん。五行については次回に聞くよ。

(つづく)