新春講演会 新川 健三郎(フェリス女学院大学教授)

事務局

アメリカのナショナリズムとブッシュ政権
−アメリカニズムの歴史的背景と新保守主義−

2005年1月9日(日)15:30-17:30
かながわ県民センター711号

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アメリカのナショナリズムは変化してきており、共和制国家の建設を志向するナショナリズムから統合を目指す国家主義的なナショナリズムが強くなっている。現在は一国覇権的な帝国としてのナショナリズムであり、これはアメリカニズムと名付けてもよかろう。

またアメリカのナショナリズムには2つの側面がある。自由・民主という普遍的価値観による市民的ナショナリズムと、誰がアメリカ人かという人間の弁別を行う人種主義的なエスニック・ナショナリズムである。アメリカは建国当初から「白人の国」という前提に立っていた。そのため、先住民・奴隷・黒人の問題な どが生まれたのである。先住民は市民でも外国人でもないのでジェノサイド的殺戮の歴史を強いられた。黒人の場合奴隷解放後にも人種問題は存在し、選挙権や職業選択において差別された。アジア系移民は帰化権さえ拒否された。またアメリカはアメリカ化の受容を前提としており、アメリカへの忠誠心を過度に要求す る社会でもあった。

アメリカには「マニフェスト・デスティニー(明白な運命)」と呼ばれる選民意識をもとにした膨張肯定論があり、劣っているものはアメリカに取りこまれる ことにより、文明化されるべきと考えられていた。19世紀末には反植民地主義というレトリックにより自由主義・門戸開放・機会均等を掲げ海外進出を図った。しかし大義名分と現実には多くの矛盾があったのである。

ウィルソンの国際主義とはアメリカの理念と結びついた膨張であり、平和な社会を作るにはアメリカが国際的な主導権を握るべきだと考えられた。アメリカが必要とする国際秩序をつくり、例外的だと考えられていたアメリカの制度をグローバルにしようとした。

第二次大戦後、超大国としてのアメリカが出現した。イデオロギー的対立が生まれ、国際関係への善悪論の導入が強まった。ヴェトナム戦争敗北への反動によ り、強いアメリカの回復が望まれるようになった。また公民権運動、フェミニズム、同性愛などのマイノリティ復権への反動や伝統的価値観の破壊への反発によ り、保守化傾向が強くなった。つまり対外関係のフラストレーションとリベラル派への対抗として保守化の動きに拍車がかけられた。

ブッシュ政権はそのような保守化傾向の中から台頭し、宗教右派などを取り込んだ新保守主義である。ポスト冷戦状況における無限定拡張と単独行動主義が現 在目立っている。アメリカ社会には良い面が多くあるが、国内の民主的理念・方法が国際社会には十分に適用されていない。国内では特権反対、平等などの基本的価値観を主張するが、対外的には「帝国」として独占、特権を求めるダブルスタンダードが存在するのである。

アメリカを相対化して捉えたり、軍事中心志向から脱却しなくてはならない。親米か否かという二項対立思考や競争原理の限界をもう一度問い直す必要がある。今後は危険なアメリカニズムから脱却し、国益優先から地球的課題をより重要視しなければならないであろう。