比較文明学体験記

宮川 真一

比較文明学なる学問に私が出会ったのは、高校3年時に池田大作氏とトインビー博士との対談『二十一世紀への対話』 を読んだときである。その後、創価大学に推薦入学させていただき、3年次は故高橋通敏先生にゼミ生としてお世話になった。高橋先生はかつて外務省の条約局 長を務められ、エジプト大使・ユーゴスラビア大使等を歴任されている。その高橋先生が当時心酔しておられたのが、トインビー著『歴史の研究』であった。ゼミ生の我々は「トインビー・市民の会」を紹介していただき、おそるおそるその研究会にも参加したものである。

その後、創価大学大学院に進学させていただき、指導教授の中西治先生より、故山本新先生についてお話をうかがう機会があった。山本先生と いえば、日本に比較文明学を紹介し、この学の発展に尽力された大功労者であられることを、当時の私は知らなかった。院生時代の後半は、働きながら学ぶ生活 になった。ある日、アルバイトの塾の帰り、古本屋で山本先生の著作を発見した。『トインビーと文明論の争点』 と題する分厚い書物の目次を開くと、なぜか胸騒ぎを覚えた。格安で購入し、読み進めるうちに、読書をしているというよりは事件に遭遇しているような気がし た。かつてアメリカ、西ヨーロッパを貧乏旅行で歩き回り、イギリス、ロシアにそれぞれ1年ほど留学させていただいたときに漠然と感じていたものの正体に触 れたような気がした。

2004年の春、私は比較文明学会に入会した。入会した年の第22回大会は、福岡県の北九州市立大学で開催された。「環境と文明の未 来」をテーマとし、初日に講演・シンポジウムが開かれ、2日目には自由論題での報告が多数行なわれた。私も早速、現代ロシアについて研究報告をさせていた だいている。大会期間中、この学会の会長を務められていた先生にもご挨拶した。その方は日本におけるトインビー研究の第一人者であられる。若造の私に対 し、池田先生とトインビーの対談は日本の比較文明学における最高峰の財産であること、比較文明学会も高齢化が進んで「おじいさん学会」になりつつあるこ と、それゆえ創価大学から多くの若手研究者がこの学会に入会して欲しいと思っていることを語って下さり、この学会の中枢におられる先生方に私を紹介して下 さった。

私はずうずうしいことを承知で、報告原稿をこの学会の機関紙『比較文明』に投稿させていただいた。案の定、厳しいご意見も頂戴し、手直しにひと夏全部使った。その甲斐あって、今年2月に刊行された『比較文明』第21号に拙稿を掲載していただくことができた。 ここに創価大学人の論文が載るのは初めてのことのようである。(拙稿「現代ロシアのナショナル・アイデンティティと『第二次チェチェン戦争』」比較文明学会編『比較文明』21、行人社、2006年。)

次回より、この論考をベースにして、「第二次チェチェン戦争」について書かせていただきたいと思う。