日米戦争開始72周年にあたって

中西 治

本日、2013年12月8日は72年前の1941(昭和16)年12月8日に日本軍が真珠湾を奇襲攻撃し、日米戦争が始まった日です。私は当時、国民学校3年生、8歳でした。ラジオで放送された大本営発表「帝国陸海軍は今8日未明、西太平洋において米英軍と戦闘状態に入れり」をいまも覚えています。

1945年8月15日に日本がポツダム宣言を受諾し、第二次大戦で敗北してから68年、あの戦争は遠い昔のこととなりました。

新しい戦争の足音が急速に近づいてきています。安倍晋三首相は本気で戦争の準備を始めたようです。「国家安全保障会議」の設置に続く「特定秘密保護法」の制定です。

私は今回の「特定秘密保護法」を1925(大正14)年4月22日に制定された「治安維持法」と同じような法律であると考えています。

「治安維持法」第1条は「国体を変革し、または、私有財産制度を否認することを目的として結社を組織し、または、情を知りてこれに加入したる者は10年以下の懲役、または、禁錮に処す」と規定しています。

この条文は1928(昭和3)年の改正で「国体を変革することを目的として結社を組織したる者、または、結社の役員、その他の指導者たる任務に従事したる者は死刑、または、無期、もしくは、5年以上の懲役、もしくは、禁錮に処」すとなりました。

1941年3月10日の改正でさらに「5年以上の懲役、もしくは、禁錮」が「7年以上」になりました。

最高の刑罰は最初の「10年以下の懲役、または、禁錮」から最後は「死刑、または、無期、もしくは、7年以上の懲役、もしくは、禁錮」になりました。

戦前と戦中の日本を知らない人のなかには「どうして戦前の日本人は戦争に反対しなかったのですか」と問う人がいます。戦前・戦中にも戦争に反対した人はいたのですが、この人々は「治安維持法」によって弾圧されました。「治安維持法」は当初「国体を変革し、または、私有財産制度を否認する」者を対象としていましたが、実際には、それは拡大解釈され、天皇制に反対する人や共産主義者だけでなく、大本教をはじめとする宗教団体や戦争に反対する平和主義者、政府の政策を批判する人々などにも適用されました。彼らは逮捕され、厳しい取調べをうけ、「転向」を迫られ、天皇と国家への服従・忠誠を強いられました。こうして日本は戦争体制を確立し、戦争を起こし、拡大していきました。その結果が敗戦でした。

2013年12月6日に成立した「特定秘密保護法」は「我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものの漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的」としています。

罰則として「特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務によって知得した特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する」と規定しています。

また「外国の利益若しくは自己の不正の利益を図り、又は我が国の安全若しくは国民の生命若しくは身体を害すべき用途に供する目的で、特定秘密を取得した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する」と規定しています。

特定秘密を漏らした公務員だけでなく、特定秘密を取得した者も罰せられます。 「特定秘密の指定」をおこなうのは行政機関の長であって、その人だけが特定秘密の内容を知り、特定秘密に指定されていることを知っています。国民は「特定秘密とは何か」を具体的に知ることはできません。国民は取得した情報が「特定秘密か、そうでないか」分かりません。

私は「治安維持法」がかつて果たした役割を情報化時代において「特定秘密保護法」が果たすのではないかと危惧しています。はしなくも両者はともに当初の罰則を「10年以下の懲役」に処すこととしています。戦争はふたたび国を滅ぼし、多くの人々を不幸にします。この道を断ち、将来に禍根を残さないために「特定秘密保護法」はできるだけはやく廃止すべきです。

私たちの研究所は現在、理事会が『所報』第8号を単行本『ビッグ・ヒストリー入門――137億年の歴史を語る』として出版するために全員で編集委員会を組織し、全力を集中して努力しています。原稿も全部そろい、編集も最終段階に入っています。ISBN(出版者記号)を確保し、新刊書を市販できるようになりました。

このような時代だからこそ私たちは平和に徹した、時代にふさわしい新しい思想と学問を創造しなければならなりません。新しい本がそのための一助になることを願っています。

2013年12月8日