ムハンマドの生涯とイスラームの成立

岩木 秀樹

イスラームはユダヤ教やキリスト教の伝統を受け継ぐ厳格な一神教である。しかしキリスト教とは異なって預言者に神性はなく、ムハンマドでさえも「市場を歩くただの商人」にすぎないとされている。またイスラームを受け入れた信徒は、部族や民族などの血縁的な絆を断ち切って一つの共同体を構成し、コーランの教えにしたがって判断し、行動するものとみなされた。ここには、イスラームがやがて世界宗教として発展していくための基本的な原理が、明快な形で示されているのである。(屋形 1993:102)イスラームは、偶像崇拝しない純粋な一神教であり、部族を超える宗教共同体を作り、宗教と政治、経済、生活を分離しない宗教である。

ビザンツ帝国とササン朝ペルシアの狭間に位置するアラビア半島は、長らく国家を持たない政治的空白地帯であった。そこに生まれた新しいイスラームという原理が、それまでにない型の世界帝国を短期間に生み出したことは、歴史的な大事件であった。この事件が興味深いのは、この帝国を築いたのがイスラームという宗教だったからであろう。(小杉 2006:15)

ここではイスラームの創唱者で最後の預言者でもあるムハンマドの生涯を見ていき、イスラーム成立の歴史的経緯を考察する。

目次

  1. 預言者と啓典
  2. ムハンマドの誕生と結婚
  3. 預言者ムハンマド
  4. 危機の時代
  5. ヒジュラの意味
  6. メディーナ憲章
  7. ムハンマドの死

引用文献

小杉泰『イスラームとは何か』講談社、1994年。
小杉泰『ムハンマド』山川出版社、2002年a。
小杉泰「イスラーム」『岩波イスラーム辞典』岩波書店、2002年b。
小杉泰『イスラーム帝国のジハード』講談社、2006年。
小杉泰『『クルアーン』語りかけるイスラーム』岩波書店、2009年。
小杉泰『イスラーム文明と国家の形成』京都大学学術出版会、2011年。
佐藤次高『世界の歴史8 イスラーム世界の興隆』中央公論社、1997年。
佐藤次高他「アラブ・イスラーム世界の形成」佐藤次高編『西アジア史 アラブ』山川出版社、2002年。
佐藤次高編『西アジア史 アラブ』山川出版社、2002年。
清水芳見『イスラームを知ろう』岩波書店、2003年。
中田考『イスラームのロジック』講談社、2001年。
中村廣治郎『イスラム教入門』岩波新書、1998年。
三浦徹編『イスラーム世界の歴史的展開』放送大学教育振興会、2011年。
屋形禎亮他『西アジア』朝日新聞社、1993年。