3. 三つの分岐点と三つのシナリオ : 2020年のロシアとロシア・中国の現代化

中西 治

(1)  2012年の分岐点

ロシアにとって時期的にもっともはやい「計画的」分岐点は2012年の大統領選挙である。このプロジェクトが始まった2010年秋に、私たちは、2012年の選挙の後もウラジーミル・プーチンがロシアの指導者であるだろうと予想していた。このさい、つぎの二つの場合が考えられた。

  • 公式の指導者と実際の指導者が同じ人物である場合「V1.」。
  • 公式の指導者と実際の指導者が別の人物である場合(双頭支配) 「V2.」。

「V2.」は政治的領域でマヌーバー(策略)をおこなうことを困難にするか、もしくは、封じてしまうので、現実性は乏しかった。このさい、現状維持の選択は双頭政治の当初の形を維持することにはならない。というのは、ドミトリー・メドヴェージェフが二期目の大統領として残った場合には、彼の陣営の立場を本質的に強めるからである。公式指導者を変更することによって現状の維持を図ったのである。

「V1.」はプーチンの大統領職への復帰を含むさまざまな方法で実現することが可能であった。「グルジア流」では首相を公式の指導者に変えるという憲法の改定によってであり、「ソヴェト流」では「権力党(与党)」の書記長(プーチン)を実際の国家元首にすることによってである。大統領に選出された人が誰であるかによって、政治的現代化の早さ、深さ、性格そのものがさまざまになりうる。

(2)  2013―2014年の分岐点

このつぎの分岐点は2013年から2014年(もしくはそれよりも早く)になるであろう。そのときに権力は国家の経済的可能性に応じて支出を削減し、社会政策を建て直さなければならないであろう。その結果、権力と社会との関係も建て直されるであろう。

この段階でV1.はつぎの三つの方法で実現される。

  • 反動的現代化「V1.1.」。
  • 政治的現代化の要素を有するスタグネーション(停滞) 「V1.2.」。
  • 権威主義的傾向の強化(権威主義化) 「V1.3.」。

これら三つのいずれの場合でも、政治的競争が増大するのを実際上避けられない。このことは地域集団を含む主要利益集団の諸利益を調整する(現在は存在しない)機関を求める。

権威主義化「V1.3.」の場合、政治的競争は破壊的要素となり、個人支配的・一元的体制の基礎を浸食する。ショック療法を伴う急激なマヌーバーという選択や家父長主義的モデルへの回帰もありうるが、可能性は低い。

公式の権限と非公式の権限が別のままである場合「V2」、最低限必要な政治的現代化さえ

実施不可能である。危機とエリートの分裂を経て「V1.2.」もしくは、「V1.1.」にさえ至るが、その可能性は低い。

(3)  2016-2018年の分岐点

第三の「計画的」分岐点は2016-2018年の一連の選挙と結びついている。

反動的現代化「V1.1.」は支配的エリートの統制下にとどまって、続くであろう「V1.1.2」。もしくは、現代化+(ゴルバチョフ流)となる可能性もある。ここでは上からの統制より離脱する過程が始まる「V1.1.1」。

スタグネーション「V1.2」は経済的・政治的危機を経て、穏健な現代化「V1.1.2」か、もしくは、権威主義化「V1.2.2」に移行する。

最後の基本的シナリオとしてはつぎの三つがある。

  • 穏健な現代化「V1.1.2」-「V1.2.1」。
  • 現代化+「V1.1.1」。
  • 権威主義化「V1.2.2」。

以上を要約すると、つぎのようになる。

2012年の大統領選挙が終わった段階では、公式の指導者と実際の指導者が同じ人物である場合「V1.」と公式の指導者と実際の指導者が別の人物である場合(双頭支配) 「V2.」の二つのシナリオがあった。

それが2013―2014年の段階でV1.は、反動的現代化「V1.1.」、政治的現代化の要素を有するスタグネーション(停滞) 「V1.2.」、権威主義的傾向の強化(権威主義化) 「V1.3.」の三つの方法で実現されることになった。

さらに、それが2016-2018年の段階では、穏健な現代化「V1.1.2」-「V1.2.1」、現代化+「V1.1.1」、権威主義化「V1.2.2」の三つのシナリオとなった。