朝鮮と中国に旅立つにあたって

中西 治

地球宇宙平和研究所の皆様

朝晩、秋の訪れが近いことを感じるようになり、少し凌ぎやすくなりました。いかがお過ごしでしょうかお伺い申し上げます。

本日、2005年8月25日に私たちの研究所の代表団は朝鮮民主主義人民共和国と中華人民共和国に旅立ちます。団員は9人、他に2人がほぼ全行程をともにされ、北京ではさらに数人の方が団に参加されます。

多くの方々のご尽力により平壌で朝鮮社会科学院の先生方、北京で北京大学日本研究センターの先生方と学術交流ができるようになりました。

私たちが日本を離れているあいだに衆議院議員選挙が始まります。いつの選挙も重要ですが、今回の選挙はことのほか重大です。主権者である国民が小泉内閣のこれまでの政治に審判を下し、これからの日本の進路を決める選挙だからです。

第一の争点は日本を戦争をしない国から戦争をする国に変えるのか否かです。

小泉内閣は第二次大戦後はじめて自衛隊を現に戦争が行なわれているイラクに派遣しました。これを認めるのか否か、今後もこのような行為を認めるのか否か、主権者ははっきりと意志表示をしなければなりません。

第二は憲法の改定問題です。今回の選挙にあたり自民党は2005年11月15日までに憲法草案を策定し、公表することを明らかにしました。民主党も憲法提言を発表します。

自民党は日本が「自衛軍」を持ち、外国で戦争を出来るように憲法を改悪しようとしています。この問題はこれからの日本政治の最大の争点となります。

第三は改革の問題です。改革というと何となくすべてが良いことだという先入観がありますが、いかなる改革にも良い面と悪い面があります。しかも、問題は誰にとって良いことであり、誰にとって悪いことであるのかです。  小泉内閣のもとで行なわれた改革によって民衆の生活は良くなったでしょうか。医療にしても年金にしても悪くなっています。改革とは支配体制を維持するために弱いものにいっそうの痛みを強いることのようです。

政治改革、政治改革とマスコミの鳴り物入りで行なわれた改革は、小選挙区制の導入であり、その行き着いた先は自民党と民主党という似たような二つの政党とその他の政党のそれへの吸収・合併・連立・埋没、少数意見の切り捨てです。憲法改悪体制の確立です。

郵政民営化の行き着く先も見えてきました。郵便貯金と簡易保険といった美味しい儲かる部分を日本と外国の金融資本に与え、儲からない郵便を市場原理の競争のなかに投げ込むことです。

国鉄の分割・民営化が過疎地の鉄道の切り捨てとなったように、過疎地の郵便局は切り捨てられ、都市部の郵便局も整理されるでしょう。過疎地はますます住みにくくなります。そうでなくても弱体化している労働組合はさらに弱くなり、労働者はいっそう困難な立場に追い込まれるでしょう。資本は横暴になっています。

郵政民営化法案の廃案はこれまでの小泉政治に対する反撃でした。衆議院では小差とはいえ可決されているのですから、参議院で大差で否決されたからといって衆議院を解散するのは筋違いです。小泉首相が辞めるべきだったのです。小泉首相は衆議院を「八つ当たり解散」し、「9・11自爆選挙」に打って出ました。彼の行動は常軌を逸しています。

小泉首相は今回の選挙の争点を「郵政民営化」に絞り、あたかも現在の郵政公社の職員が全額税金で雇用されている公務員であるかのごとく語り、これを民営化することによって税金を使う公務員が大幅に削減されるかのように宣伝しています。しかし、実際は現在の郵政公社でも、かつての郵政省の時代でも郵政事業は独立採算制で運営されており、税金は1円も使われていないのです。

小泉首相は、郵政民営化に反対した自民党のかつての同志を落選させるために、つぎつぎと対立候補を立て、マスコミの関心をもっぱら郵政民営化と「刺客」に集中させています。自民党が出してきた候補者の顔ぶれを見ると、郵政民営化が誰に利益を与えるかがよく分かります。

小泉首相は今回の「郵政民営化」選挙に勝てば、おそらく、いまは沈黙しているイラク戦争への自衛隊の派遣や憲法改悪の問題を含めて小泉政治のすべてが国民の信任を得たかのように振る舞うでしょう。これが小泉政治の手法です。

沈みつつある泥船から機を見るに敏な人々が逃げだし、次々と新党を作った1993年の宮沢政権末期の状況が再現しています。あのときは宮沢内閣に反旗を翻した人々が自民党をとびだして嬉々として新党を作ったのですが、今回は小泉内閣に反旗を翻した人々が自民党から追い出されて已む無く新党を作っています。窮鼠猫を噛む。前回と同じように「日本」を掲げる新党が台風の目となりそうです。

21世紀初頭における日本の政治勢力の再編成が始まり、政治地図が急速に書き換えられています。今回は郵政民営化の是非で再編が進んでいますが、次は憲法問題です。

いま問われているのは主権者である私たちの歴史的な洞察力と判断、行動です。私たちは小泉政治のパフォーマンスに惑わされることなく、ことの本質を把握し、行動しなければなりません。

日本の将来、アジアの将来、地球の将来がかかっています。

9月2日に帰国します。

お元気で!