第44回総選挙結果に想う

中西 治

政治家は毀誉褒貶が激しい。

参議院が郵政民営化法案を否決したときに地獄の底に突き落とされた小泉さんが、いまは、してやったりとほくそ笑んでいる。

小泉さんはプロの大衆政治家である。大衆のつぼをよく心得ている。そうではないといくら批判されても、懲りもなく「官から民へ、公務員を減らそう」と単純な同じことだけを繰り返して大衆の支持を獲得した。

岡田さんはアマチュアの駆け出し政治家である。解散時に千載一遇のチャンスと色めきたったが、あとは郵政改革一点張りの小泉さんに押されぱなし。なす術もなく敗退した。

日本の郵政組織は多年にわたり地域の名士である特定郵便局長を中心として選挙のたびに自民党の集票組織として機能してきた。庶民はかねがねこれを苦々しく思ってきた。それが今度は小泉さんが水戸黄門よろしく地方の悪代官退治の先頭を切ったかのごとくであった。大衆は日頃の鬱憤を晴らし、拍手喝采した。

結果は自民党296、公明党 31、自公合わせて 与党は327、これに対して民主党113、共産党9、社民党7、野党3党を合わせても129、これに国民新党4、新党日本1、それに郵政民営化に反対し 自民党から追い出された人々を中心とする無所属18を加えても152、過半数241に遠く及ばない。代議士の数だけ見ると、野党は完敗である。

本当に日本の有権者はこれほど圧倒的に郵政民営化を支持しているのであろうか。

確かに比例区の票の動きを見ると、自民党は前回2003年11月の総選挙時に比べ520万票ほど票を増やし、2580万票ほど獲得している。公明党も 25万票ほど増やし、890万票に達している。合わせて3480万票ほどである。風は郵政民営化賛成に吹いた。

他方、民主党は前回に比べて105万票ほど票を減らし、2100万票ほどしか獲得していない。しかし、共産党は33万票、社民党も69万票ほど票を増やし、それぞれ490万票と370万票を獲得している。野党を合わせると2960万票ほどとなる。これに新党日本の164万票と国民新党の118万票を加えると、郵政民営化に反対する票は3250万票ほどに達する。

新党大地の43万票をどちらに入れるかで、その差は変わってくるが、せいぜい200万票から300万票ほどの違いである。

現在の選挙制度は民意を議席に正しく反映しない。このことを主権者は忘れてならないし、選ばれた代議士諸公も忘れないでいただきたい。主権者は自民と公明で何をしても良いと全権委任したわけではない。

今回の選挙で改革改革と騒ぎ立てた人は本当にこの改革がどこに行くのかを知っているのであろうか。改革改革の声に踊らされてあわててバスに飛び乗った人はその行き着く先がどこであるのかを知っているのであろうか。

私はこの15年ほど日本の大学改革の過程をを比較的身近に見てきた。その結果は教職員の人員削減や定年切り下げなどのリストラと大学の専門学校化である。大学の知的水準は低下し、大学人は知的に頽廃し始めている。

改革の賞賛者はこれで日本の大学もやっと旧制大学から新制大学になったと自画自賛している。

今回の選挙では郵政改革が構造改革の本丸であると言われた。私は本当の本丸は憲法第9条の改悪であり、郵政改革は本当の本丸を落とすための予行演習であると考えている。小泉さんの郵政民営化に反対するものへの懲罰は憲法改悪に反対するものへの見せしめである。

つぎの選挙が正念場である。