クリスチャン『時間の地図』注解〈3〉 人類と人間の違い

のぶおパレットつじむら

「宙(そら)読む月日」第11回

人類と人間の違い
日本語で人類進化について記述する際は、「人類」と「人間/現生人類/ヒト」は区別されています。

大まかに言えば、進化の途上でチンパンジーの系統と枝分かれして以降の、わたしたちにつながる系統に連なるすべての動物または人びとが「人類」です。「人類」の中で、現代まで生きのびた唯一の種が、わたしたちホモ・サピエンス Homo sapiens です。現に生存している唯一の人類という意味で「現生人類」 modern humans とも言います。他の人類は全て絶滅しました。またmodern humans は「現代人」と訳されることも多いようです。

「人類」は、ホモ属以外の属(アウストラロピテクス属など)も含みますし、同じホモ属の異なる種(ホモ・エレクトスなど)も含みます。ところが「人類」と区別して「人間」と言うときは、異なる属、異なる種は含まず、現存種のホモ・サピエンスのみを指します。「ヒト」は Homo sapiens の和名です。

以上から、いったんは
「人類 = チンパンジーの系統と枝分かれした後の 生存種 と その近縁の絶滅種の全て」
「人間 = 絶滅をまぬがれた人類の生存種 = 現生人類 /現代人 modern humans = ヒト(ホモ・サピエンス) Homo sapiens 」

と現行の表記を整理することができます。

英語の human や humans は、ここで言う「人類」の意味(広義のヒューマン)も、「人間」の意味(狭義のヒューマン)もどちらも含んでいます。humans だけでは、どこまでを指すのか判然としません。ですから、わざわざ “modern” をつけて、humans の意味範囲を(生き残った人びとに)限定しているわけです。 

ただし、英語でも日本語でも、近年の進化学上の系統分類にこだわりを持っている人たち(要はマニアックな人たち)の書いたもの以外で、そうした区別にこだわる必要はないでしょう。なんてったって、書いた本人がこだわっていない可能性がありますからね。

どうも生物のグループ分けは、人間が勝手に国境を引くのと似ているような気がします。人類は他の動物とは違う、人間は他の人類とは違う、ということを強調しすぎるのはいけません。現代人の多くを悩ます「メタボ」と「肥満」は、いずれも「動物」としての本分をまっとうしていないところに根があるのではないでしょうか。自動車や電車で出勤し、職場では机でじっとしている。歩くことすら厭(いと)う。これでは「動物」ではなく「静物」です。 (つづく)