クリスチャン『時間の地図』注解〈2〉 クリスチャンの人間の分類法

のぶおパレットつじむら

「宙(そら)読む月日」第10回 

3.人間の分類と位置

3つ目は、地球生命の中でわたしたち人間をどう位置づけるかです。現在もっとも広く認められている生物の分類法は、「界 kingdom > 門 phylum(動物の場合), division(植物の場合) > 綱(こう) class > 目(もく) order > 科 family > 属 genus > 種(しゅ) species 」という順で下位に分かれていきます。

人類の進化史についても、新たな発見の度に書き換えられるため、分類の呼称やその呼称に何が含まれるかについて、当然さまざまな違いがあります。こうした分類は下に降れば降るほど、すなわちわたしたち「人間」に近づけば近づくほど、その分類自体が論争の種となり、書き換えられる頻度も高くなります。

クリスチャンの人間の分類法
ここではまず、クリスチャンさんの採る分類法を、『時間の地図』にもとづいて紹介します。(*28)

上界 superkingdom
真核生物上界 Eukaryota (ユーケァリオータ)
真核生物 eukaryotes (ユーケァリオーツ)
(細胞核をもつ生物)

界 kingdom
動物界 Animalia (アニメリア)
動物 animals (アニモーズ)
(〔光合成ができないため移動して〕他の生物を摂取する真核多細胞生物)

門 phylum
脊索(せきさく)動物門 Chordata (コーデイタ)
脊索動物 chordates (コーデイツ)
(背骨のある動物)

綱 class
哺乳綱 Mammalia (マメイリア)
哺乳類 mammals (マモーズ)
(温血で毛皮におおわれ、生まれる前はメスの体内で、生後は母乳で養育される動物)

目 order
霊長目 Primates (プライメイツ)
霊長類 primates (プライメイツ)
(サル、キツネザル、類人猿)

上科 superfamily
ヒト上科 Hominoidea (ホミノイディア)
ヒト上科 hominoids (ホミノイズ)
(人類と〔その他の〕類人猿 = チンパンジー、ゴリラ、テナガザル、オランウータン)

科 family
ヒト科 Hominidae (ホミニダイ)
ヒト科 hominids (ホミニッズ)
(大型類人猿 = 人類、チンパンジー、ゴリラ)

亜科 subfamily
ヒト亜科 Homininae (ホミニナイ)
ヒト亜科 hominines (ホミナインズ)〔=人類〕
(習慣的に二足で歩く霊長類 = 人間と過去4、500万年間の種々の祖先)

属 genus
ヒト属 Homo (ホモ)

種 species
ヒト Homo sapiens (ホモ・サピエンス)〔=人間〕

以上がクリスチャンさんの『時間の地図』で採用されている分類です。ここで何点か補足しておきます。

第1に、このような生物の分類を始めたのは、18世紀の博物学者カール・フォン・リンネ Carl von LINNÉ で、それが改定に改定を重ねられて今日に至っています。上界(じょうかい)や亜科(あか)というのは、後から追加された分類です。

第2に、分類ごとに、グループ全体を指す名称(大文字で始まる)と、それらに属する成員たちを指す名称(小文字で始まる)が異なっているため、注意が必要です。例えば、真核生物上界 Eukaryota がグループ全体を指し、真核生物 eukaryotes がそれに属する成員たちを指す、といった具合です。(後者は数えられるので、複数形があるわけです。)

第3に、これはあくまでクリスチャンさんの分類であって、これが最新の分類ではないし、異なる分類もある、ということです。これについては後でふれます。

最後に、わたしはここでクリスチャンさんの原文の humans という表現を、意図的に「人類」と「人間」に訳し分けています。語の意味する範囲が異なるからです。 (つづく)


(*28) Christian, Maps of Time, 2nd ed., pp. 120-121, 125-127, 153ff. 〔 〕内は辻村による補足。