むすび――宇宙、地球、人間の将来 : ユニバーサル・ヒストリーと宇宙・地球・人間の将来

中西 治

日本でも宇宙の研究が進んでいます。2012年1月10日にNewton別冊『大宇宙――完全版』が発行されました。この書によると、今から数十億年後に太陽系が属する「天の川銀河 (銀河系) 」が“近所”の大銀河である「アンドロメダ銀河」と“衝突”します。正確にいつ衝突がおきるのかは定かでありません。衝突するといっても、銀河はすかすかなので、恒星どうしが衝突することはほとんどありません。両銀河は衝突後、たがいの重力の作用で大きく形をくずしながらも、いったん“すり抜ける”ことになります。このあと、太陽系がアンドロメダ銀河に“持って行かれる”可能性が3%ほどあります。そうでない場合は、両銀河はふたたび接近し、最終的には融合し、一つの長円形銀河になります。

今から約80億年後に太陽が巨大化を始め、非常に明るくなります。地球では日射量が非常に多くなり、地表の温度が上がり、海は干上がって、生命が生存していくのがきわめてむずかしくなります。地球の事実上の死です。太陽がどのくらい巨大化するかは分かりませんが、太陽の半径が今の約300倍にまでふくれあがると、太陽に近い、水星と金星と地球は、最終的に飲みこまれてしまいます。地球は、膨張して希薄になった太陽の中をしばらく公転しつづけますが、ガスの抵抗を受け、地球は徐々に太陽の中心へと落下していき、いずればらばらになり、その破片はとけて蒸発してしまいます。ただし、太陽のガスの放出量が多い場合には、地球は太陽に飲みこまれません。

今から約1000億年後に私たちが住んでいる「天の川銀河」は1000億年ほどかけて最終的にすべて衝突・合体し、一つの巨大な長円形銀河にまとまります。「おとめ座銀河団」も最終的に巨大長円形銀河にまとまりますが、この二つの「巨大な長円形銀河」が一つにまとまることはありません。それは宇宙の膨張速度が加速しており、この二つは遠ざかっていくからです。

今から約10の100乗 (100億を10個かけ合わせた数) 年後にブラック・ホールが“蒸発”(ブラック・ホールの表面から光子=光の粒などの素粒子が飛び出していき、ブラック・ホールがその分、軽く小さくなっていくこと)し、消えてなくなり、宇宙は素粒子だけが飛びかうだけとなります。誕生直後の宇宙も素粒子が飛びかうだけであったから、元へもどったのです。ただし、宇宙は膨張をつづけているので、途方もなく素粒子の密度が薄められ、さびしい世界です。

80億年後に太陽が巨大化し、地球の温度は上がり、地球上の生命は死に絶え、地球は太陽に飲みこまれてなくなります。宇宙の膨張はいまもつづいており、その速度は徐々に増していますが、最終的に、宇宙には素粒子だけが残り、ビッグ・バン直後にもどります。

つまり、宇宙が誕生してから今日まで130億年、これから10の100乗 (100億を10個かけ合わせた数) 年後にブラック・ホールは“蒸発”しますが、それでも素粒子は残り、宇宙は存在し続けます。宇宙が完全になくなるのは「10の10乗の76乗年後」です。いずれにしても宇宙がなくなります。その前に地球を含む太陽系がもっと早く、50億年後から80億年後になくなります。

生者必滅。生まれてきたものは必ず滅します。人間もそうです。一人の人間は長く生きてせいぜい100年です。このような人間が何億年、何十億年先を心配することはありません。千年、一万年ぐらいの先を見ながら、100年間の人生をこの大宇宙のなかでいかに生きるべきかを考えればよいでしょう。それを考えさせるのがユニバーサル・ヒストリーです。

2012年2月にモスクワで開催された国際会議「地球の将来-2045年」で共同議長を務めた米国南メイン大学のバリー・ロドリーグはこの会議で「新しい1000年紀のためのマニフェスト。人間世紀のための行動指針 (Manifesto for a New Millennium. A Working Agenda for the Anthropocene) 」を発表しました。彼は冒頭で「未来はすべての生命体がめざしているものの尺度である」と述べています。これは未来が大きく人間にかかっていることを指摘したものです。ついで、急速に進展する科学技術革新が良い結果と悪い結果をもたらすことを指摘し、この科学技術革新と生産と市場を合理的に管理することが人間の繁栄だけでなく、地球上における種としての生き残りそのものの中核にあることを強調しています。そして、私たちはこの会議で無条件にきわめて重要な素晴らしい革新的な考えを聴いたが、主要な問題はこれらをどのようにしてリンクさせるのか、どのようにして増進させるのか、どのようにして普及させるのかであり、それは、私たちが新しい世界的意識と新しい世界的文明をつくりだしているやり方、英国のデイヴィッド・フークス (David Hookes) が言う「地球的啓蒙 (Global Enlightenment) 」のなかにあると述べています。新しい啓蒙の時代です。

問題の核心は、クリスチャンが指摘するように、いまの資本主義体制のままで良いのか、スピールが指摘するように、必要以上のものを欲しがる人間性のままで良いのか、この生物学的本能を文化の助けを借りて抑えることができるのか否かです。

私は問題を解決するためには人間の意識を変えることが必要であると考えています。これは大変難しいことです。しかし、私は、やっと、そのための方法を見つけ出しました。それは新しい思想と学問をつくりだし、人々の間に広めることです。私はそのような思想と学問がユニバーサル・ヒストリーとユニバーサル・サイエンスであると考えています。ユニバーサル・ユニバーシティーはそれらを創り出し、普及する教育・研究機関です。

世界には志を同じくする多くの同僚がいます。私はこの人々と手を携えて進んでいこうと思っています。皆さんも、ぜひ、ともに与えられた命を大切にし、毎日を悠々楽々と生きながら、いっしょに進んでいただきたいと願っています。

ご静聴ありがとうございました。