9.クリスチャンの未来観: ユニバーサル・ヒストリーと宇宙・地球・人間の将来

中西 治

クリスチャンの書の第6部「将来の展望」は「近い将来:次の100年間」、「中間の将来:次の数世紀と千年紀」、「遠い将来:太陽系、銀河、ユニバースの将来」から成っています。

クリスチャンは最初の「近い将来:次の100年間」で世界の人口が2000年の60億人から2100年には100億人を超えることを予測しています。これはポール・ケネディが1994年に出版した『21世紀のための準備 (Preparing for the Twenty-First Century) 』から引用したものです。ケネディは1990年1月20日の『エコノミスト (The Economist) 』にもとづいてこの資料を作成しています。

問題はこれらの人々の衣食住を確保できるのか否かです。クリスチャンはそれを確保するためには二つの重要な措置を採らなければならないと主張しています。一つは処女資源の利用からリサイクルへの転換です。もう一つは持続可能な、汚さないエネルギー、たとえば、太陽熱、風力、水素によって動力化した燃料電池などの利用です。

次は全地球的な生態的問題と社会問題です。クリスチャンは資本主義体制にきわめて批判的です。それは資本主義の存在そのものが成長の継続に依拠しているからです。クリスチャンは次のように述べています。

これは資本主義が廃止されなければならないことを意味しているのではないだろうか。20世紀の共産主義革命が示唆しているのは、廃止されつつある資本主義が大変破壊的なプロジェクトであり、明らかに平等主義的な社会か、または、生態に敏感な社会を、いかなる場合にも、つくるようなものではないことである。

よりいっそう深刻な問題は、資本主義が現代社会の科学技術革新の推進力であり、資本主義経済が生産と販売の増大に依拠していることである。これは持続可能性との矛盾を増大させるのではないだろうか。

20世紀の生態的・政治的諸問題のいくつかが21世紀に本当に託されることになれば、現代革命の利得は未来の諸世代に委ねられることになるだろう。もしも、そうでなければ、現代革命は統御できなくなり、軍事的・生態的大惨事を引き起こす現実の危険がある。これらの大惨事は私たちの子供たちや孫たちをイースター島のような貧しい世界に置き去りにすることになるであろうし、その荒廃はいっそう大規模になるであろう。

次は「中間の将来:次の数世紀と千年紀」です。ここでクリスチャンは現代世界を形成している次のような幾つかの比較的大きな動向を取り上げ、それが未来にむけてどのようになるのかを検討しています。

第一は人口動向です。現在の人口動向が1世紀もしくはそれ以上維持され、人口増加はゆっくりと減少へと向かい、人口数は安定するか、または、減るでしょうが、平均年齢は上がるでしょう。

第二は技術革新の動向です。科学技術的創造性の現在の爆発は数世紀以上も続くでしょう。人口の安定と情報技術・遺伝子工学における科学技術革新の加速化、新しいエネルギー源の制御(多分、水素融合を含む)は、生産性の向上が多数の人々の最低水準の維持のためではなく、すべての人々の現実の生活水準の上昇のために利用されることを意味するようにすべきです。

第三は社会・経済的動向です。過去5000年間のこの動向は経済的・政治的不平等の見るべき縮小についてほとんど希望をもたらしていません。反対に、それは富の配分がより急勾配となり、もっとも弱い人ともっとも力のある人との間の差別を増大させることを示唆しています。しかし、過去1世紀の消費者資本主義の進化は、その配分の底辺にいる人々の生活水準が上がるかも知れないことを示しています。

第四は月、近くの惑星、アステロイド(小惑星)の開発です。

最後は「遠い将来:太陽系、銀河、ユニバースの将来」です。太陽はほぼ40億年前に出現し、現在はその生命の半分ほどを終えたところであり、これから、まだ、40億年ほど存在するでしょう。しかし、地球上の生命は太陽が死亡する前に死亡します。それは太陽が燃え尽きる前に地球の表面の温度が高くなり、地球上の生命がなくなるからです。

クリスチャンは本書の最後で「まとめ」として次のように述べています。

将来を予言することは危険な仕事である。ユニバースは内在的に予測できないからである。しかし、ある状況のもとで私たちはそれを試みなければならない。次の世紀についてしっかりと考えることは価値がある。私たちが今日おこなっていることが、これから1世紀生きる人々の生活に重大な影響を与えるからである。

もしも、私たちの予言が標準よりもそれほど離れたものでないとするならば、私たちはこれらの予言に照らして理性的に行動し、大惨事を避けることが出来るかも知れない。このような大惨事は深刻な生態学的退化や、資源入手の不平等の増大によって引き起こされた軍事的衝突を含む、幾つかの形態をとりうる。

この二つの問題はつながっているし、また、理知的な管理と結びついている。それは自然環境を保護し、よりいっそう持続可能な関係へと世界を導き、富に対する偏見が残っている場合でさえ、貧者の生活条件を向上させる地球経済をつくることを可能とするかも知れない。

数世紀程度については、この可能性が急速に増大し、予言する試みをほとんど無価値とするほどである。しかし、とくに、科学技術においては、妥当な未来を暗示するような大きな傾向が見られるだろう。人間は太陽圏内の諸惑星もしくは月に、多分、もっと遠くにさえ、移住するようになるだろうし、きわめて正確に発生過程を統御することを学ぶであろう。

しかし、いかなる綿密な予言も、もちろん、人間によるものか、アステロイド・インパクトのような地質的もしくは天文的現象によるものか、いずれかの原因によって生ずる予期せぬ重大事によって脱線させられることがある。宇宙論的規模では、私たちの予言はいっそう信用されるようになっている。

太陽と私たちの太陽系は40億年以内に死ぬであろう。しかし、ユニバースはそれよりも長く生き残るであろう。最近の証拠は、ユニバースの膨張は永遠に続くであろうことを示唆している。もし、そうであるならば、私たちは、ユニバースが膨張を保つように、それが、また、どのようにして衰退するのかを叙述するために、基本的な物理学的および天文学的過程についての現代の理解を利用できるであろう。

想像もつかない遠い未来の立場から見るならば、ユニバースが有しているのは、ますます減っている、ほんのわずかな、ちらほら程度の光子 (photons) と原子内微粒子 (subatomic particle) であるに過ぎないとき、この本で扱われている130億年はほんのひとときの、緑あふれる春のように見られるであろう。

クリスチャンはニコス・プランツォスの著書 (Nikos Prantzos, Our Cosmic Future: Humanity’s Fate in the Universe, Cambridge: Cambridge University Press,2000) から宇宙の未来年表を作成していますが、これについては次の「スピールの未来観」のところで紹介します。