3.1946年におけるH.G.ウェルズの世界史認識 : ユニバーサル・ヒストリーと宇宙・地球・人間の将来

中西 治

H. G. ウェルズは1946年の『世界史概観』の冒頭で次のように述べています。

われわれの世界の来歴は、まだきわめて不完全にしか知られていない。200年ほど前には、ほんの3000年前あまり過去からの歴史のほかは、わかっていなかった。世界は紀元前4004年に突然に創造されたものと信じられ、また、教えられていた。この誤解は、旧約聖書のあまりにも文字どおりの解釈と神学的仮定とにもとづくものであった。

このような考えは、すでに久しく、説教する人たちによっても放棄されている。最近50年間に、わが地球の年齢と起源とについて、きわめて興味ある探求が科学者たちの間でおこなわれてきた。地球は20億年以上の長期間にわたり、太陽の周囲を旋回する遊星として独立の存在を保ってきたということは、いまや妥当らしく思われる。いや、もっと長いかも知れない。

地球の歴史の初期の状態を見ることができるならば、現在のような光景ではなくて、むしろ溶鉱炉の内部のような、または、冷却して凝固する以前の溶岩の流れの表面のような、光景が見られるであろう。100万年、また100万年とたつにつれて、徐々に、こうした火炎の光景もその爆発的白熱を失うであろう。地球はしだいに、われわれの現に住む地球に似たものになり、最後には、最初の雨が降りそそぐ時代がくるであろう。しかし、地球上にはまだ何らの生物もなかった。

このあと、ウェルズは生物の誕生と進化の経過をたどり、「最初の人間らしい生物がこの遊星上に生活したのは、長い全世界的寒冷期の雪のただなかであった。」と言います。この寒冷期は四つの氷河時代に分かたれています。第一氷河時代は60万年以前にやってきたとされており、第四氷河時代は約5万年前にその最盛期に達したとされています。しかし、「人間らしい生物」とはいかなる生物であり、それが生活したのは「長い寒冷期」のうちのどの時代であったのかは明確ではありません。

歴史家の認識は200年前にはまだ3000年前まででした。世界は紀元前4004年に突然に創造されたものと信じられていました。それが20世紀のなかばには20億年前までさかのぼり、その視野は地球全体に広がりました。20世紀後半にこの認識は130億年前にまでさかのぼり、視野は宇宙全体に広がりました。丁度この時期に私の歴史研究は始まりました。