日米戦争開始76年にあたって

中西 治

本日2017年12月8日は、日本が1941(昭和16)年12月8日(米国ハワイ時間7日)に米国ハワイのパールハーバー(真珠湾)を奇襲攻撃し、米国との戦争を始めてから76年です。

私は当時8歳。その日の朝のことをいまもはっきりと覚えています。

それから4年後1945(昭和20)年8月15日に日本の敗戦を伝える昭和天皇の玉音放送を聞きました。12歳でした。

それからさらに72年、私はいま84歳、ふたたび戦争の足音が朝鮮半島から、中東から聞こえてきます。

現在、戦争が起こる可能性がもっとも高いのは朝鮮半島です。

戦争はどんな理由があっても先に仕掛けた方が悪いのです。

私は金正恩さんも、トランプさんも最初に戦争を始めないように願っています。

朝鮮半島で戦争が始まれば、今度は戦火は朝鮮半島に止まらず、日本列島にも及ぶでしょう。

沖縄の日米軍事基地だけでなく、日本各地にある原子力発電所も攻撃の対象になるでしょう。ここを攻撃し原子炉を破壊すれば原子爆弾や水素爆弾を使用しなくても大きな被害を与えられることを地震と津波で大きな被害をうけた福島の原子力発電所が教えています。

絶対に朝鮮で戦争を起こさせてはなりません。この点で国際連合が果たす役割は大です。

朝鮮戦争は米国軍・大韓民国軍をはじめとする国際連合軍が朝鮮民主主義人民共和国軍と中国人民義勇軍の連合軍と戦いました。この戦争は現在停戦中です。

ここで国際連合が前面に出て朝鮮民主主義人民共和国と話し合い、完全な平和を回復することが必要です。

その後に米国との国交正常化と朝鮮半島の非核化です。

トランプさんとは何者か最初は良く分かりませんでした。大統領就任後1年弱にしてやっとその正体が分かってきました。

彼は商売人です。

儲かるとなったら、兵器でも飛行機でも自動車でも何でも売ります。

損をするとなったら、米国がこれまで一生懸命つくってきた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を投げ出し、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国を批判し、気候変動枠組条約(COP21)から離脱します。

トランプさんは自ら超大国としての地位を放棄しています。

トランプさんはエルサレムをイスラエルの首都として認め、そこへ米国大使館を移すと言い出しました。これはこれまでの中東和平への米国の努力をも水泡に帰し、中東だけでなく、世界の各地を戦場と化します。

トランプさんは超大国アメリカ合衆国の大統領としてふさわしくないようです。

そのことについて最終的な判断を下すのは米国民です。

ロシア十月革命100周年記念日に寄せて ー朝鮮戦争を再発させてはならないー

中西 治

2017年11月7日はロシア十月革命(ロシア旧暦1917年10月25日)100周年記念日でした。この日に寄せて、この革命の意義と現在の朝鮮危機について書きます。

まずロシア十月革命についてです。

十月革命の指導者はロシア社会民主労働党多数派(ボリシェヴィキ)のレーニンでした。この党は革命成功後の1918年3月にロシア共産党と改名しました。

この党の主要な課題は当時進行していた第一次大戦から離脱し、ロシアの民衆に平和を、農民に土地を与えることでした。

十月革命によって誕生した旧ロシア帝国内のロシア、ウクライナ、ベロロシア、ザカフカスなどの国々は1922年12月30日に「ソヴェト社会主義共和国同盟(以下ソヴェトと略称)」を結成しました。

ソヴェトは社会主義社会さらには共産主義社会の建設をめざしました。それは前人未到の旅の始まりでした。

ソヴェトは第二次大戦においてヒトラー・ドイツを打倒する上で決定的な役割を果たしました。アメリカ合衆国(以下米国と略称)は日本軍国主義を打倒する上で決定的な役割を果たしました。

この結果15の共和国から成るソヴェトと50州から成る米国が戦後世界で超大国として指導的役割を果たしました。米ソ両国は戦時協力から戦後冷戦となりましたが、公然と戦争をすることはありませんでした。両国は日独の報復戦争を阻止しました。

米国の力と影響力を弱めたのは1950年代の朝鮮戦争と1960年代のヴェトナム戦争でした。米国では1960年代に公民権革命が起こりました。

ソヴェトの力と影響力を弱めたのは1980年代のアフガニスタン戦争でした。ソヴェトでは1990年代に入りソヴェトから離脱する国が出始めました。1991年12月25日にゴルバチョフ大統領が辞任するとともにソヴェトは消滅しました。

ロシア十月革命の最大の意義は人類が初めて社会主義社会・共産主義社会の建設に意識的に取り組んだことでした。それは途中で挫折しましたが、その教訓はソヴェトの後継国家であるロシア連邦や中華人民共和国に受け継がれています。

ロシア連邦ではプーチン大統領のもとで経済振興とユーラシア経済連合やBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)などの強化・拡大が図られています。

プーチンさんはソヴェト時代に国家保安委員会(KGB)の軍人で、共産党員でした。彼はソヴェト共産党がなくなった後も党員証を持っていました。彼はソヴェト時代が生んだ優れた知識人の一人です。

中国では1921年7月にロシア十月革命の影響をうけて中国共産党が創立されました。この中国共産党が1949年10月1日に中華人民共和国を建国しました。

2017年10月18日に開催された中国共産党第19回大会で習近平総書記は中国共産党が形成した「新時代の中国の特色ある社会主義」思想をマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、?小平理論、「三つの代表」重要思想、科学的発展観を継承し発展させたものと規定しました。

この習近平総書記の報告によると、現在から21世紀半ばまでの30年間ほどは次の三つの時期に分けられています。

  1.  現在から2020年まで:小康社会(ややゆとりある社会)の全面的な完成を決する時期。
  2.  2020年から2035年まで:社会主義の現代化を基本的に実現する時期。
  3.  2035年から今世紀半ばまで:中国を富強・民主・文明・調和の美しい社会主義現代化強国に築き上げる時期。

中国の社会主義社会建設は68年かかってここまで来てました。これからが大変です。

中国は対外的に一帯一路計画を提起し、ユーラシア大陸を鉄路と海路で結び、広大な経済圏を形成する計画を進めています。

ロシアと中国との間ではユーラシア経済連合と一帯一路計画を結合して大西洋から太平洋に至る地域の統合を図ることが考えられています。

ロシアと中国の計画は壮大です。そこには夢があります。共産主義者の夢です。

ロシア十月革命の意義はソヴェトの経験だけではなく、ロシア連邦の経験と中国革命の経験なども踏まえて検討・評価されるべきでしょう。それは100年に限定されるものではないでしょう。

次は現在の朝鮮危機についてです。

米国は第二次大戦での勝利によって大西洋を越えてヨーロッパ大陸に、また、太平洋を越えてアジア大陸に、大きな影響力を行使できる国になりました。ヨーロッパでは北大西洋条約機構(NATO)を組織することによって軍事的にも優位に立ちました。

それに陰りが見え始めたのは1949年10月1日に中華人民共和国が誕生したときでした。アジアでの米国の影響力が低下しました。

追い打ちをかけたのが1950年6月25日の朝鮮戦争の勃発でした。朝鮮半島の南部(大韓民国)と北部(朝鮮民主主義人民共和国)がともに朝鮮半島の武力統一をめざして戦いました。この戦争に米国(国連軍)と中国(義勇軍)が軍事介入し国際的な大戦争となりました。

1953年7月27日に休戦協定が調印されましたが、この協定に調印したのは北と中国義勇軍と国連軍(この中に南の軍隊が入っていました)の代表だけでした。

南の李承晩大統領はこの協定の交渉に参加せず、調印もしませんでした。その理由は停戦になれば武力統一の機会が遠のくと考えたからでした。彼は米国が南と「相互防衛条約」を締結することを条件に停戦を妨害しないことを約束していました。この条約は1953年10月に締結されました。この条約に基づいて米国軍がいまも南に駐留しています。

これが今日の朝鮮危機の始まりでした。

朝鮮戦争の結果は米国に深刻な影響を与えました。米国は朝鮮戦争で負けはしませんでしたが、勝てませんでした。さらに1960年代から1970年代にかけておこなわれたヴェトナム戦争で米国は負けました。

この間に日本は1951年9月8日にサンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約に調印し、1952年に発効しました。安保条約は1960年1月に改定されましたが、いまも米軍基地は日本にあります。

2017年11月5日に米国のトランプ大統領は日本にある米国軍の横田基地に到着し、7日に横田基地から韓国に向かいました。この基地は日本にありますが、日本のものではありません。米国のものです。私はこれをテレビで見て、米軍による日本占領はまだ続いていると思いました。

トランプさんと安倍さんは朝鮮問題や日米貿易について話し合いました。日本は戦争に備えてたくさんの武器を米国から買い、米国の貿易赤字を減らすのに努力するようです。日本がその武器を使って朝鮮と戦ってくれれば米国にとってはなお有難いでしょう。

私は「制裁だ、制裁だ」と声高に言っている人は実際には「戦争を挑発」している人であると思っています。本当に平和を願っているならば、いまこそ、話し合いのテーブルに率先して着くべきですし、相手にも着いてもらうように努力すべきです。

私は今回の問題の解決はそれほど難しいことだと思っていません。休戦協定を平和条約に変え、北と米国の間で国交を正常化すれば良いのです。幸いにして現在の南の文在寅(ムンジェイン)大統領は話し合いで問題を解決しようとしています。いまがチャンスです。

トランプさんが決断すれば一挙に解決します。

核の問題、ミサイルの問題はそのあとの問題です。世界にはすでにたくさんの核とミサイルがあります。これらの核・ミサイルの問題とともに今回の核・ミサイルの問題も解決すれば良いのです。世界は核全廃の方向に向かっています。

朝鮮半島に住む人々は南も北も戦争を望んでいないでしょう。戦争勃発とともに彼らの住む場所は戦場となります。

中国もロシアも今回は絶対にこの戦争にかかわらないでしょう。前回で懲りています。

米国も本当は朝鮮で戦争をしたくないでしょう。前回の戦争で手こずりましたし、今回は米軍人がたくさん韓国にいますから、戦争が起これば、ただちにそこが戦場になり、多くの米国人が死にます。トランプさんは強気な発言をしていますが、米国人はこれを許さないでしょう。朝鮮半島は米国にとって命がけで戦わなければならない場所ではありません。

日本はこのままいくと戦争に引きずり込まれます。沖縄だけでなく日本全土が戦場になります。

1962年のキューバ・ミサイル危機のとき私は米ソ核戦争は起こらないと思っていました。それは人間の理性を信じていたからです。ソヴェトのフルシチョフ首相と米国のケネディ大統領の理性を信じていました。

今回も私は人間の理性を信じています。金正恩さんとトランプさんの理性を平和のために信じます。

中西治責任編集『宇宙額と現代世界』出版

事務局

中西治 責任編集『宇宙学と現代世界:地球人・宇宙人に』地球宇宙平和研究所、2017年、434頁、定価2500円+税。

目 次

はじめに――宇宙学とは――/中西 治

1.Вглядывая в ХХI век : Мегаистория и ее“загадочная Сингулярность ”/А. П. Назаретян(ロシア語原文)
Peering into the 21st Century : Mega-History and its “Mysterious Singularity”Akop P. Nazaretyan(英語原文)
21 世紀を見つめて:メガヒストリーとその「謎めいた特異点」/アコプ・ナザレチャン(桜井 薫訳)

2.Русская пролетарская революция в контексте Мегаистории/А. П. Назаретян(ロシア語原文)
メガヒストリーの中でのロシア・プロレタリア革命/アコプ・ナザレチャン(桜井 薫訳)

3.Identity and Big Geopolitics/Lowell Gustafson(英語原文)
アイデンティティと大きな地政学/ローウェル・グスタフソン(辻村 伸雄訳)

4.An Emergent Future : Evolving A Global Revolution/Barry H. Rodrigue(英語原文)
創発的未来:地球革命を進化させる/バリー・ロドリーグ(辻村 伸雄訳)

5.从世界历史整体发展看苏联和中国对社会主义道路的不懈探索――纪念十月革命100周年暨新中国成立68周年――
胡德坤、牟伦海(中国語原文)
世界史の全体的発展史観から見たソ連と中国における社会主義の道への弛まぬ探索――十月革命100 周年及び新中国樹立68 周年を記念して――/胡 徳坤、牟 倫海(黄 祥雲訳)

6.潜在的超大国としての中国と二つの「百年」/王 元

7.ビッグ・ヒストリアンとしてのフリードリヒ・エンゲルス/片山 博文

8.中央アジアと私/木村 英亮

9.中東イスラームの100 年の回顧と展望/岩木 秀樹

むすび――現代世界とは――/中西 治

あとがき/中西 治

付録 第 5 回国際学術会議“GLOBALISTICS-2017” での報告 中西 治
執筆者および訳者紹介

日本国憲法第九条の改悪に反対する

中西 治

日本国憲法第九条は次のように規定しています。

「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

ところが安倍晋三さんの自由民主党は明10日に公示される衆議院議員選挙の「公約」として、憲法第九条の二つの項を維持したままで「自衛隊の存在を明記する」ことを掲げています。

これはきわめて重要な公約ですが、きわめて奇妙な公約です。

というのは日本国憲法第九条は上記のように「戦争を永久に放棄し」、「軍隊を保持せず」、「国の交戦権を認めていない」と宣言しています。

このあとにどのように書けば「自衛隊の存在」を認めることができるのでしょうか。自衛隊は「軍隊ではなく」、その行動は「戦争ではない」と言わなければならないのです。

実際これまで自衛隊は個別自衛権にもとづく「専守防衛」に徹した「自衛のための組織」であり、「軍隊」ではないとしてきました。だから、「軍隊」と言わず、「自衛隊」と言っているのです。

ところが、2015年に自衛隊が集団的自衛権にもとづき海外でも武力が行使できるようになりました。自衛隊はもはやれっきとした「軍隊」です。「専守防衛」論は通じなくなりました。

それでもなお自民党が今回の選挙で公約として第九条に「自衛隊の存在を明記する」としたのは、安倍晋三内閣が先に行なった集団的自衛権にもとづく自衛隊の海外派兵と戦争行為を憲法第九条のオブラートに包みながら合法化するためです。

自民党が選挙に勝てば、安倍晋三さんは日本国民が外国で戦争する軍隊を認めたと主張するでしょう。

最後に一言。

安倍晋三さんは朝鮮問題で「制裁一辺倒」ですが、その結果朝鮮半島で戦争が起こったとき、安倍晋三さんは本当に米国と一緒に朝鮮と戦うつもりなのでしょうか。そうなれば、朝鮮半島だけでなく、日本列島も戦場となります。それでも安倍晋三さんはいまの強硬路線を貫くのですか。

日本の主権者がどのような選択をするのか。最後は主権者が問われるのです。

総選挙の開始に寄せて

中西 治

2017年9月28日に衆議院が解散され、総選挙が始まりました。公示は10月10日、投開票は22日です。

「民進党」の前原誠司さんが小池百合子さんの「希望の党」との「合流」を希望しました。

小池さんはこれを断りました。小池さんの「選択的併合」となりました。

「民進党」はこれまで出した公認をすべて取り消しました。立候補希望者は「民進党」を脱党し、改めて「希望の党」に公認を申請することになりました。

小池さんはこれらの人々の申請を無条件に認めず、個別に、とくに、安全保障に対する考え方を考慮して決定すると言っています。

「民進党」は選挙が始まる前に候補者が一人もいなくなりました。総選挙が終わると、参議院議員もいなくなります。「民進党」はなくなります。

「自由民主党・公明党」と「民進党・共産党・自由党・社会民主党」との闘いが「自民党・公明党」、「希望の党」、「共産党・社民党」の三者の闘いとなりました。

自民党は競争相手が二つに割れたことにほっとしているでしょう。

「自民党」も「希望の党」も「保守と改憲」です。どちらが勝っても本質的に変わりません。

今回の出来事の「黒幕」はほくそ笑んでいるでしょう。

安倍さんは長くなりました。それに強引すぎます。

小池さんも東京都知事に当選したときや東京都議会議員選挙に勝利したときと比べて輝きを失っています。

有権者は変化を求めています。どのような選択をするのでしょうか。

朝鮮半島とトランプ・金正恩・プーチン

中西 治

現在、世界でもっとも緊張しているのは朝鮮半島です。この朝鮮半島をめぐって米国のトランプ大統領と朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が罵り合っています。子供の喧嘩のようですが、二人とも感情的な人ですから、何を仕出かすか分かりません。

他方、ロシアのプーチン大統領はヨーロッパからユーラシア大陸を横断し、朝鮮半島を縦断して韓国の釜山(プサン)に至る鉄道の開設を呼びかけています。プーチンさんが「時の氏神」になるのか否か。朝鮮半島はどこへ行くのでしょうか。それをここ
で検討します。

今回、口火を切ったのはトランプさんです。彼は2017年9月19日に国際連合総会で演説し、次のように述べました。

「米国は偉大な力と忍耐力を持っている。しかし、米国自身とその諸同盟の防衛を余儀なくされた場合、われわれは北朝鮮を全体的に破壊するより他に選択はないであろう。ロケット・マンは彼自身と彼の体制のために自殺的な役割を果たしている。」

Remarks by President Trump to the 72nd Session of the United Nations General Assembly

これに対して金正恩さんがいきり立ち、同月21日に次のような声明を発表しました。

「トランプが世界の前面で私と国家の存在自体を否定し、侮辱し、わが共和国をなくすという歴代で最も暴悪な宣戦布告をした以上、われわれもそれに相応する史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮するであろう。ものを聞き分ける能力もなく、自分の言いたいことだけを言う老いぼれには行動によって示すのが最善である。」

朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長声明

2017年9月25日の『朝日新聞』によると、朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外務大臣は同月23日に国連総会で演説し、「最終目標は米国との力の均衡をとることだ」と述べました。

プーチンさんはすでに2017年6月2日にロシアのペテルブルグで開かれた国際経済フォーラム全体会議で次のように述べていました。

「私たちは国際法の諸基準と基本的諸原則を皆が同じように理解することについて合意し、これらの原則を守ろうではないか。国際法についての合意ができ、それが守られるまで私たちがいま北朝鮮で見ているような問題が生じるであろう。小さい国々は核兵器の所有以外に、自国の独立、安全、主権を守る他の方法を有していない。」

http://kremlin.ru/events/president/news/54667

また同年9月5日にプーチンさんは中国で開催されたBRIKS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)首脳会議後のロシア人記者との会見で次のように述べていました。

「イラクでは大量破壊兵器があると言ってサダム・フセインとその家族を子供や孫まで殺した。北朝鮮の人々はイラクで、その後リビアで行なわれたことを忘れていない。昨日も言ったが、北朝鮮の人々は安全を感じない間は草を食べてもその計画を放棄しないであろう。何が安全を保障するのか。国際法の復活である。すべての関係者の間の対話である。北朝鮮を含むすべての参加者が全滅されると恐れないようにしなければならない。逆に紛争のすべての当事者が協力の道に進まなければならない。戦争ヒステリーの焚き付けは地球的惑星的大惨事と多数の人的犠牲をもたらすであろう。北朝鮮の核問題は平和的外交的に解決する以外に道はない。」

http://kremlin.ru/events/president/news/55535

さらにプーチンさんは同月7日にロシアのウラジヴォストークで開催された東方経済フォーラム全体会議で北朝鮮も参加する次のような計画を明らかにしました。

「北朝鮮を徐々に地域協力に引き込まなければならない。ロシアにはすでにすべての人が知っている具体的提案がある。ロシアのシベリア横断鉄道と韓国の鉄道を北朝鮮経由で結びつけ、ロシア・朝鮮・韓国の共同鉄道をつくるとともに、パイプライン輸送をおこない、北朝鮮の港湾を開発すること等である。この他にサハリン(樺太)に橋を架け、サハリンと北海道を結ぶ計画もある。」

http://kremlin.ru/events/president/news/55552

以上の発言をまとめると、プーチンさんの考えは次のようなものです。

イラクとリビアで起こったように米国は気に食わぬ国の政権を転覆し、最高指導者とその家族を殺すから、朝鮮のような国は核兵器とミサイルで自国を守らざるを得なくなる。これを力で押しつぶそうとすると核ミサイル戦争になるから「話し合い」で解決するとともに、当該国を国際社会へ復帰させなければならない。

私はこの考えに賛成です。朝鮮半島を対立の場としてだけでなく、協力の場としても見ることが必要です。シベリア横断鉄道を朝鮮経由で韓国の釜山まで延長する計画は前にもありましたが、それが無くならないで再登場したことを私は大変喜んでいます。北海道がサハリン経由でユーラシア大陸と繋がる。素晴らしい「夢」です。

敗戦72年にあたって

中西 治

本日、2017年8月15日は、昭和天皇が1945(昭和20)年8月15日正午にラジオを通じてポツダム宣言受諾を発表し、米国、中国、英国、ソヴェトなど連合国に無条件降伏してから72年になります。

敗戦ではなく、終戦だと言う人がいます。それは誤魔化しです。あの戦争を知らない人です。あの戦争を正当化する人です。

あのとき私は12歳、母や弟、妹たちとともに疎開していた奈良県の県立五条中学校1年生でした。たまたま大阪から来ていた父とともに近くの隣組長さん宅で玉音放送を聞きました。放送は雑音ばかりで、私にはよくわかりませんでした。両親は分かったようです。帰宅後に母が父にひそひそ声で「3代目は国を滅ぼしましたね」と語っていました。

これが私の戦後の始まりでした。

日本国民の多くは戦後70年間、明治以降の日清戦争、日露戦争、第一次大戦、第二次大戦など戦争の歴史を深く反省し、日本国憲法のもと平和国家への道を歩んできました。

ところが安倍晋三内閣は戦後70年の2015年に集団的自衛権の名のもと自衛隊を海外に派遣し、日本を外国で戦争のできる国に変えました。

日本は再び戦争への道を歩み始めています。

このようなときに「グアム攻撃」とか「朝鮮半島攻撃」とかの声が聞かれます。核ミサイル攻撃についての「未熟な認識」も聞かれます。

広島に原子爆弾が投下されたあと急遽、中学校の校庭に全校生徒が集められ、先生が「今回広島に新型爆弾が投下された。これまで黒い服を着るように言ってきたが、今後は白い服を着るように」と指示されたことを思い出しています。

「新型爆弾」は黒い服を着ようが、白い服を着ようが、人間を殺したのです。

朝鮮と米国の戦争好きは戦争を煽っています。日本の一部もこれに呼応して「ミサイル防衛」などとはしゃいでいます。このような論議に乗ってはなりません。

前回、1950年6月に朝鮮戦争が起こったとき、日本はまだ米国をはじめとする連合国の占領下にあり、日本軍は武装を解除され、一兵もいませんでした。米国は急遽「警察予備隊」をつくり、再軍備を始めましたが、日本国内の「朝鮮戦争反対」の声は強く、米国は日本兵を朝鮮に連れて行くことはできませんでした。

しかし今は違います。日本は自衛隊を海外に派遣し、外国で戦争ができるようになっています。現に日本の自衛艦が米国の航空母艦と朝鮮半島周辺で合同訓練をしています。

朝鮮戦争が再発し、自衛隊が米軍と行動をともにすれば、朝鮮半島だけでなく、沖縄を含め日本列島全体が戦場となります。

それは第二次大戦や前回の朝鮮戦争以上の悲劇を朝鮮半島と日本列島にもたらすでしょう。

どこであれ戦争は絶対にしてはなりません。それは地獄です。

朝鮮半島の非核化と米朝国交正常化を! ―ティラーソン米国務長官の訪ロに寄せて―

中西 治

1950年6月25日に朝鮮戦争が起こってから間もなく67年になります。

1953年7月27日に板門店で国連軍首席代表ハリソン陸軍中将と朝鮮軍首席代表南日中将が停戦協定に調印し、直ちに国連軍司令官クラーク大将と金日成朝鮮人民軍最高司令官および彭徳懐中国人民志願軍司令員が停戦協定文書に署名して「停戦」が実現しました。それが63年余ずっと続いています。まだ「戦争」は完全に終わっていません。

なぜこういうことになったのでしょうか。

それは当時の李承晩韓国大統領があくまでも武力統一をめざし、この機会を逃すと統一が不可能になると考えて停戦に反対していたからです。これを米国が支持しました。

停戦交渉での韓国軍代表を任命したのは韓国大統領ではなく、国連軍司令官でした。李承晩大統領は米国が韓国と相互防衛条約を締結することを条件として停戦を妨害しないことを約束しました。この米韓相互防衛条約は「停戦」実現後の同年10月に締結されました。

それ以後、韓国は米国とともに朝鮮との戦争に備えて毎年合同軍事演習をし、朝鮮も韓国および米国との戦争に備えて今日に至りました。その間に韓国に金大中大統領が登場し、韓国と朝鮮が朝鮮半島の非核化と平和・統一に向けて歩み始めましたが、これも途中で挫折しました。。

この間の経緯については、拙著『ロシア革命・中国革命・9.11――宇宙地球史の中の20-21世紀――』南窓社、2011年、に掲載されている私の論文「中国革命と朝鮮戦争」を参照ください。

このような状況が今年トランプ米国大統領の登場とともに変わり始めました。

彼はオバマ前大統領の「話し合い路線」は「六者協議」に見られるように失敗したから、今後は「力の行使=戦争」をも含む方式を検討すると言い出しました。トランプさんは最初、米国はもう「世界の警察官の役割」は果たさないと言っていましたが、最近は「世界の軍隊の役割」を果たすようになっています。

たとえば、シリア問題です。

2017年4月4日午前6時半過ぎに何者かがシリアの反政権派が拠点としているシリア北西部のイドリブ県ハーン・シェイフンを爆撃しました。

トランプさんは即座にこれをアサド政権軍が化学兵器を使用した攻撃と断定し、4月6日から7日にかけての深夜に地中海上の米国軍艦からシリア政権軍の空港(The Shayrat Air Base in Syria)に向けてミサイルを発射しました。

丁度、中国の習近平国家主席が米国を訪問し、トランプ大統領と夕食をともにしていました。習近平国家主席はこの話をトランプ大統領から直接聞き、一応納得したようです。

このシリアの空港を使っているロシアの外務省は7日に声明を発表し、「米国がこのような無分別な態度をとるのは初めてではない。そもそも米国軍隊がシリア政府の同意がなく、国連安保理事会の決議もなしに、シリア領にいること自体が国際法の乱暴な明らかな侵犯である。今日米国がとっている行動はロ米関係をより一層破壊する」と述べました。

http://www.mid.ru/web/guest/maps/us/-/asset_publisher/unV… Заявлен ие МИД России в связи с вооруженной акцие й США в Сирии 7 апреля 2017 года

朝鮮半島でも緊張が高まりました。

米国太平洋軍のハリス司令官は8日にシンガポールを出港しオーストラリアに向かっていた原子力航空母艦カールビンソンをはじめとする攻撃艦隊を9日に朝鮮半島近海の西太平洋に向かわせることにしました。

https://www.defense.gov/News/Article/Article/1146225/carl-… Carl Vinson Strike Group Departs Singapore for Western Pacific

このような状況のもとで米国のティラーソン国務長官が11日から12日にかけてロシアを訪問し、プーチン大統領、ラヴロフ外相などと会談しました。12日に行なわれたティラーソン国務長官とラヴロフ外相の共同記者会見でラヴロフ外相は次のように語りました。

  1. 今晩は。長い一日でした。私たちはティラーソン国務長官と話し合った。いましがた2時間以上にわたったプーチン大統領との会見がおこなわれた。話し合いは詳細に、率直におこなわれ、両国関係と国際問題での相互行動にとってカギとなる諸問題全般に及んだ。
  2. 私たちの関係と国際情勢の現段階が大いに安定しているものではないことに留意した。問題がたくさんある。その中には前オバマ政権の緩慢な行動によって残された“地雷”のような問題もある。私たちは現実主義者である。このような障害を除去するのには多大の努力が必要なことを理解している。本日、プーチン大統領は私たちの一貫した路線を確認した。
  3. 私たちは私たちの協力を阻害し、紛争を先鋭化させようとする試みを見ている。これは先見性のない態度である。モスクワとワシントンが協力したとき、私たち両国民だけでなく、全世界が利益を得ていることを歴史は示している。
  4. 国際テロリズムとの妥協のない闘いをめざす私たちの共通の目標を確認した。このテーマは米ロ両国の大統領が数度の電話による会話で論議したものである。
  5. 4月4日のイドリブ事件と7日の飛行場攻撃事件を審議した。本日、私たちはこの事件を徹底的に究明しなければならないと主張した。ロシアはシリア政府が国連とハーグの「ОЗХО(化学兵器禁止機関)英語OPCW」に書簡を送り、検査官をイドリブと飛行場に派遣するよう要請したことに留意するよう主張した。私たちはアメリカの同僚がこのような調査を支持する用意のあることを知った。
  6. ロシアの空軍・宇宙軍と米国を中心とする同盟国との間にかつて存在した「シリアでの事件防止と航空安全確保についての覚え書」はロシア側の都合でその効力が停止されていた。本12日にプーチン大統領がこの覚書の効力を復活させる用意があることを明らかにした。
  7. ロシアと米国はシリアをはじめとする国々の内政に干渉する意図を有しないことをかつて公然と声明した。この声明は依然として有効である。イラク、リビアなどの例は内政干渉の試みが繰り返されることに対する良き警告となる。
  8. 「ИГИЛ(イラクとレバントのイスラム国家、レバントとはシリアとレバノンなどの複数の国・地域を含む歴史的地域名)英語ISIL」とその他のテロリストたちの完全な破壊と壊滅を達成しようとする私たちの共通の決意は有効であり、それを本日完全に確認した。
  9. アフガニスタンのようなテーマもある。4月14日にモスクワでアフガニスタンとその隣国も参加した会合『モスクワ・フォーマット』が開催される。米国の代表も招かれている。
  10. ウクライナにおける危機に触れた。私たちの共通の立場は「2015年のミンスク合意が達成されなければならない」である。
  11. 朝鮮半島情勢についても語った。両国はこの問題について採択された国連安保理決議は順守されなければならないと主張している。政治的・外交的努力によって朝鮮半島の非核化の問題を解決するための条件をつくりだす方向に向かわせなければならない。

http://www.mid.ru/ru/foreign_policy/news/-/asset_publisher/… Выступ ление и ответы на вопросы СМИ Министра ин остранных дел России С. В. Лавлова…

これに対しティラーソン国務長官は次のように語りました。

  1. 今晩は。私たちはプーチン大統領との約2時間の実り多い会見から帰ってきたばかりである。私たちは米ロ関係の現状を率直に論議した。私は米ロ関係の現状が低い点にあり、両国間の信頼が低い水準であるという見解を表明した。世界の二大核保有国がそれにふさわしい関係を持つことができていない。私たちは私たちのコミュニケーション・チャンネルを増大させる方策を論議した。
  2. ラヴロフ外相と私は即座に考えなければならない問題と長期にわたって考えなければならない問題について長い間話し合った。私たちは長期間の関係の改善が意見の異なる問題を前進させるのに役立つことを理解した。
  3.  私たちはシリアについて広範囲に話し合った。いくつかの領域では私たちは共通の考えを持っている。とくに私たちは統合した安定したシリアをともに信じている。私たちは私たちの両国を攻撃しようと望んでいるテロリストたちにとっての「安全な天国」を否定する点で一致している。
  4.  私たちはシリア問題の小さいことを処理し、関係を安定させる方向で前進させるために作業部会をつくることで一致した。ラヴロフ外相と私はシリアを前進させるための提案を検討することで一致した。
  5. 私たちは北朝鮮が非核化されるべきであるという点で一致している。私たちは私たち両国の外交レベルと軍事レベルの両方を含めて、シニア・レベルのコミュニケーションが必要なことで一致した。私たちはまた北朝鮮の体制がもたらす現実の脅威―この体制が進めている核プログラムの発展、この北朝鮮の体制に対し路線を変更するように促すうえでロシアが果たす建設的役割についても論議した。そのことによって私たちは未来について話し合う状況をつくりだすことができる。
  6. 私たちはミンスク合意の重要性を考慮した。ロシアは暴力を段階的に減らし、分離派軍隊と重兵器の撤退を進めることによって合意の履行を前進させることができる。

<https://www.state.gov/secretary/remarks/2017/04/270136.htm> https://www.state.gov/secretary/remarks/2017/04/270136.htm Remarks With Russian Foreign Minister Sergey Lavrov at a Press Availability

ここではプーチン大統領の考えはほとんど紹介されていません。プーチン大統領は4月11日におこなったイタリアのマッタレッラ大統領との会見後の記者会見で次のように語っています。

  1. 私は2003年の事件を思い出している。このとき米国の代表者が国連安保理においてイラクで発見された化学兵器のようなものを示した。このあとイラクでの軍事カンパニーが始まった。国が破壊され、テロリストの脅威が高まり、「イラクとレバントのイスラム国家」が国際舞台に現れた。
  2. どうしてこのようなことがいま起こっているのか。米国の前政権のおかげで多くのヨーロッパ諸国が米国大統領選挙運動中に反トランプの立場をとった。いま、すべてが西側共同体内の関係の回復を願っている。団結のための大変良いプラットフォームがある。シリア、ロシア、共通の敵である、素晴らしい。私たちはこれが相互活動を良い方向に向かわせることを望むだけである。
  3. 新しい攻撃があるのだろうか、ないのだろうか。このような挑発がダマスカスの南部近郊を含むシリアの他の地域でも準備されている。その使用の責任をシリアの正式政権に負わせようとしているとの情報がある。私たちはこのような行為を徹底的に究明し、ハーグのしかるべき国連機関に提訴するつもりである。

http://kremlin.ru/events/president/news/54267 Заявление для п рессы по итогам встречи с Президентом Ита лии Серджо Маттареллой

2017年4月11日にトランプ大統領はFOXビジネスネットワークのインタビュー収録で、朝鮮の核実験やミサイル開発を念頭に、金正恩朝鮮労働党委員長を「大きな過ちを犯している」と批判しました。

12日(日本時間13日早朝)に国連安保理事会は化学兵器問題についての米英仏の決議案をロシアの拒否権によって廃案としました。中国は棄権しました。

13日に米軍はアフガニスタンで「IS(イスラム国)」の地下施設を破壊するために大規模爆風爆弾「モアブ」を使用したと発表しました。

15日に米国のペンス副大統領がアジア太平洋地域を訪問し、韓国のソウル、日本の東京、インドネシアのジャカルタ、オーストラリアのシドニーなどを歴訪することになりました。

<https://www.defense.gov/News/Article/Article/1152026/penc> https://www.defense.gov/News/Article/Article/1152026/penc…Pence to Discuss North Korean Aggressiovn on Asia-Pacific Trip

16日午前6時過ぎに朝鮮が中距離弾道ミサイルの発射実験をおこないましたが、失敗しました。

17日午前にペンス米副大統領が朝鮮半島の非武装地帯を訪問し、午後に韓国の黄教安首相(大統領権限代行)と会談しました。会談後の共同記者会見でペンスさんは「朝鮮はトランプ大統領の決意やこの地域の米軍の力を試すようなことはしない方が良い」と述べました。

18日午後にペンス副大統領は訪日し、安倍首相、麻生副首相兼財務相などと会談しました。

19日午前にペンス副大統領は米海軍横須賀基地に停泊中の原子力空母ロナルド・レーガンを訪問した後、次の訪問地ジャカルタに向かいました。

同じ19日にティラーソン国務長官は国務省での記者会見で北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定することを検討していると述べました。

20日にペンス副大統領はインドネシアでトランプ大統領が2017年11月に日本を含めて初めてアジアを訪問する可能性のあることを明らかにしました。

同じ20日に国連安保理事会は朝鮮による16日のミサイル発射を強く非難する報道声明を発表しました。

21日午前に日本国内閣官房長官記者会見のホームページが「弾道ミサイル落下時の行動についてのホームページ」を「内閣官房国民保護ポータルサイト」に掲載すると発表しました。このサイトは「北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に落下する可能性がある場合」、「近くのできるだけ頑丈な建物や地下街などに避難する」、「できれば窓のない部屋に移動する」などの注意喚起をおこなっています。

http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201704/21_a.html

同じ21日に日本の防衛省は海上自衛隊の護衛艦2隻を海上自衛隊佐世保基地(長崎県)から出港させました。この2隻は間もなく朝鮮半島周辺に到着する米国のカールビンソンなどと合流し、共同訓練を実施する予定です。

以上の事実の多くは『朝日新聞』の報道によります。

現在の世界情勢が徐々に明らかになってきました。

第一に米ロ関係は良くありません。モスクワにある米国のカーネギセンターは現在の米ロ関係を「新しい冷戦」と特徴づけています。4月12日のプーチン・ティラーソン会見は4月21日までロシア大統領府のホームページに会見があった事実も、会見の内容も掲載されていません。余程重要な内容か、余程発表したくない内容なのか、でしょう。

第二に米中関係も必ずしも良くありません。それでも米ロ関係よりはよろしい。

第三に中ロ関係はまあまあです。

第四に日米関係では相変わらず日本が米国の目下の同盟者の役割を果たしています。その典型的な例が沖縄の普天間基地の辺野古への移転です。沖縄県民の多数が反対し、知事も移転に反対しているのに日本政府は移転を強行しています。第二次大戦中も日本は沖縄にだけ地上戦を押し付け、多大な被害と負担を強いました。

第五は朝鮮半島情勢の緊張です。朝鮮半島は「戦争の瀬戸際」にあります。米国のカールビンソンなどが朝鮮半島に近づいています。日本の自衛艦もこれに合流し、共同演習に参加すると言われています。

現在の最大の課題は朝鮮半島の緊張を緩和し、朝鮮半島問題を平和的に解決することです。こういう時にこそ「冷静に慎重に」対応し、「平和への道」を探索しなければなりません。

人間はみんな「誇り高い」です。トランプさんも金正恩さんも同じです。

朝鮮はこれまで米国から下に見られ、「停戦」後ずっと対等な話し合いを拒否されてきました。

それならばと彼らは核兵器とミサイルをつくり始めたのです。

朝鮮が現に持つている核・ミサイルはたかが知れています。

米国は1945年にすでに原子爆弾を持ち、それを運ぶ長距離爆撃機B-29を持っていました。実際に広島と長崎に原子爆弾を投下しました。

米国は戦後70年余も原子爆弾・水素爆弾・爆撃機・ミサイルをつくり続けました。米国の持つ核ミサイル兵器は膨大です。朝鮮とは比較になりません。

米国と朝鮮が戦争を始めれば、最終的には米国が勝つでしょう。

それでも戦争が始まれば、朝鮮は死に物狂いで戦うでしょう。米国は手こずるでしょう。前の戦争で米国は体験済みです。

今回の戦争に中国とロシアは参加しないでしょう。

それでも戦場は朝鮮半島に止まらず、米軍基地のある沖縄をはじめとする日本各地にも戦火が及ぶでしょう。

今回もし自衛隊が朝鮮半島で本格的に戦うとなれば、事態は一転するでしょう。

戦争の性格が変わります。

「南北朝鮮民族の内戦で米国が南を支持する戦争」に「南北朝鮮民族の反日戦争」という性格が加わります。

事態は複雑になり、収拾のつかないものになります。いずれにしても、朝鮮半島は「生き地獄」となります。

日本も「生き地獄」となります。

私たちはこの「生き地獄」を避けるために最善の努力をする必要があります。

私は「トランプさんの出番」がきたと考えています。

トランプさんが習近平さんと一緒に金正恩さんと会い、「朝鮮半島の非核化」と「米朝国交正常化」を決めれば良いのです。

米朝を含めて平和を願う世界のすべての人が安堵の胸をなでおろし、大喝采を送るでしょう。

21世紀の人間はこれくらいのことができなければなりません。

米中首脳会談に寄せて

中西 治

米国のトランプ大統領が2017年4月6日(木)から7日(金)にかけて2日間、米国フロリダ州パームビーチの別荘「マール・ア・ラーゴ」に中国の習近平(シーチンピン)国家主席を招き、会談しました。

この会談中の6日午後9時40分(米国東部夏時間、日本時間7日午前10時40分)にトランプ大統領はシリアのアサド政権がシリア国民に対して恐るべき化学兵器を使用したとしてアサド政権下の空軍基地を攻撃する命令を発しました。

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/04/06/stat…  Statement by President Trump on Syria

米国のティラーソン国務長官が7日午後3時58分(日本時間8日午前4時58分)からの記者会見で語ったところによると、この攻撃の事実をトランプさんは6日夜の晩餐会の終わりころに習近平さんに直接伝えました。習さんはこの事実を伝えられたことに感謝し、人々が子供たちを殺すようなときには、このような対応が必要なことを理解すると述べたと言われています。

https://whitehouse.gov/the-press-office/2017/04/07/bri… Briefing by Secretary Tillerson, Secretary Mnuchin,and Secretary Ross on President Trump’s Meetings with President Xi of China

他方ロシア大統領報道部は7日午前9時(モスクワ時間、日本時間7日午後3時)に「ロシア大統領はシリアに対するアメリカの攻撃を国際法の基準を侵すものであり、主権国家への侵略とみなす。その際こじつけの口実が用いられている。シリア軍は化学兵器を保有していない。」とのコメントを発表しました。

http://kremlin.ru/events/president/news/54241

ティラーソン米国務長官はロシア大統領のこのコメントについて先の記者会見で次のように述べています。

「私はロシア人からのこのような反応に失望している。なぜなら、これはアサド政権に対する支持を今後も続けることを示すものであり、とくに、このような恐ろしい攻撃の仕方を自国民に対して実行する体制を今後も支持することを示すものである。」

今回の習近平さんの米国訪問の結果、現在の米国と中国の関係が明らかになってきました。

米国は中国を対等のパートナーとして見ていないようです。そうでないと、遠路はるばる中国から来た客人を前にして中国と親しいロシアが支持するシリアを攻撃するなどということはしないでしょう。トランプさんは習近平さんに「米国」をとるのか、「ロシア」をとるのかを試しました。

また、先のティラーソンさんの記者会見によると、トランプさんは朝鮮問題についても習近平さんに「中国が私たちと一緒にできない」のであるならば、「私たちは独自のコースを描く用意がある」と言っています。

習近平さんは客人としてトランプさんの顔を立て、事を荒立てず、決裂を避け、今後の「米中関係」の枠組みを作って帰国しました。

本来ならば、首脳会談後には両国首脳の共同記者会見があり、共同宣言や共同声明などが発表されます。ところが今回はそれらがありませんでした。

習近平さんとしては公開の席で米国のシリア攻撃に賛成したり、支持する声明を発表するわけにはいかなかったのでしょう。

習近平国家主席との会談終了後に発表されたトランプ大統領の所見は「米国と中国との関係にめざましい進歩が見られた。私たちは今後多くの進歩を追加して創り出すだろう」でした。

https://www.whitehouse.gov./the-press-office/2017/04/07/re… Remarks by President Trump After Meeting with President Xi of China

トランプさんは「したいようにする」人のようです。

シリア問題でも「したいように」しました。「イラク戦争の教訓」はありません。

朝鮮問題でも「したいように」するでしょう。「朝鮮戦争の教訓」はありません。

トランプさんは化学兵器で亡くなった人々を悼むのですが、そのことによって生ずる新たな戦争による死者に対する哀悼の気持ちはないようです。戦争の危険が高まりました。

これに対して私たちはどのように対応するのか、一人一人が考えるべきときのようです。

朝鮮半島問題の平和的解決を! ――ティラーソン米国務長官の日・韓・中訪問に寄せて――

中西 治

朝鮮半島情勢が注目を集めています。

2017年3月1日から恒例の米国軍と韓国軍の合同軍事演習が韓国内で始まっています。朝鮮はこれに強く反対しています。

同月6日に米国軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD=サード)の発射台などが韓国慶尚北道星州郡(キョンサンプクト・ソンジュ)にある韓国ロッテグループ系列のゴルフ場に輸送機で運び込まれました。THAADは6基の発射台と48発のミサイルなどで構成され、朝鮮の短距離、中距離弾道ミサイルを迎撃する役割を担っています。これには朝鮮だけでなく、中国も高性能レーダーの範囲が自国にも及ぶとして強く反対しています。

同6日朝、朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長立会いの下、同国西部の平安北道東倉里(トンチャンリ)から弾道ミサイル4発が発射されました。そのうち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下しました。

7日午前、安倍晋三首相は米国のトランプ大統領と電話で協議した後、「朝鮮の脅威は新たな段階になっていることを日米で確認した」と記者団に語りました。

同日、朝鮮中央通信は、この発射は有事の際に在日米軍基地への攻撃を担う朝鮮人民軍戦略軍火星砲兵部隊の訓練だったと報じました。

この間に金正恩さんの異母兄金正男(キム・ジョンナム)さんがマレーシアで死亡したことが明らかになりました。

10日、韓国の憲法裁判所は朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する韓国国会の弾劾訴追を妥当と認めました。朴槿恵さんは韓国大統領職から罷免されました。次の大統領選挙は60日以内に実施されます。

このように最近の朝鮮半島情勢は「きわめて危険」です。「一触即発」の感があります。

朝鮮半島はこれからどうなるのでしょうか。この点で大きな役割を果たすのは米国のトランプ大統領です。ところが、彼はこの問題について多くを語っていません。

そこで私はトランプ政権で国務長官になったティラーソンさんに注目しました。彼は2017年3月15日から19日まで日本、韓国、中国の3国を歴訪しました。

私はこのティラーソンさんの3国での発言を検討し、トランプ大統領の対朝鮮半島政策を考えることにしました。

第一は3月16日の日本東京での演説です。ティラーソンさんは「北朝鮮を非核化しようとする過去20年にわたる外交的及びその他の努力が失敗であった」と述べました。https://www.state.gov/secretary/remarks/2017/03/268476.htm

第二は同月17日の韓国ソウルでの演説です。ティラーソンさんは「戦略的忍耐政策は終わった。外交的、安全保障的、経済的な新しい方法を検討する。すべてのオプションがテーブルの上にある」と述べました。記者団から「6者協議が実り多くないとしたら、効果的な方法は何か」とか、「軍事的オプションを含むのか」との質問が出ました。彼はこれに対して「5者か6者」、「軍事的紛争までいくことを望んでいない」と答えました。https://www.state.gov/secretary/remarks/2017/03/268501.htm

第三は同月18日の中国北京での演説です。ティラーソンさんは「中国の王毅外相と私は北東アジアとアジア太平洋地域の安定と安全を守ることの重要性について話し合った。私たちは過去20年以上にわたっておこなわれた努力が北朝鮮の不法な兵器プログラムによって引き起こされた脅威を抑制できなかったことに留意した。中国の公表された政策は朝鮮半島の非核化である。私たちは私たちの決定を新しくした。私たちは一緒に北朝鮮政府にその人民のためより良い道と異なる未来を選ぶように説得する努力をする。」と述べました。

米国のABCニュースの記者がトランプ大統領の17日のツイッター「北朝鮮は悪い、中国はほんの少ししかしていない(North Korea’s bad and China has done very, very little)」を紹介したのに対して、ティラーソンさんは「半島の緊張は極めて高い、事態はずいぶん危険なレベルに達している(…that tensions on the peninsula are quite high(inaudible=聞き取れない) and that things have reached a rather dangerous level.)」と答えました。https://www.state.gov/secretary/remarks/2017/03/268518.htm

第四は19日の北京人民大会堂でのティラーソン国務長官と習近平国家主席との30分間の会談です。この会談で米中両国の国交樹立以来40年間の歩みについて話し合われ、両国にはより偉大な協力の機会があるという点で意見が一致しました。ティラーソンさんは近く行われるトランプ大統領の訪中について語り、そこでの論議は将来の米中関係への道を描くことになるであろう(…for discussions that will chart the course for future U.S.-China relations.)」と述べました。米国務省ホームぺジ“Secretary Tillerson’s Meeting With President Xi Jinping of the People’s Republic of China(P.R.C.)”。

私はこれら一連のティラーソンさん発言を読んでほっとしました。朝鮮半島で差しあたって「戦争はない」と思いました。

ところが、『朝日新聞』2017年3月21日朝刊によると、18日の『労働新聞』は「米国の(北朝鮮)体制転覆案は悪の帝国の終末案」と非難し、19日にトランプさんは金正恩さんについて「極めて悪い振る舞いをしている」と述べ、20日の朝鮮中央通信は「米国は最悪のならず者国家」と批判したと言われています。いずれにしても、米国はティラーソン国務長官の報告を受けた上で、新たな北朝鮮政策について詰めの協議をするとみられています。

私はトランプさんが金正恩さんと直接会って話し合えば良いと考えています。二人はともに「個性的な人間」です。年齢は相当離れていますが、案外気が合うかも知れません。トランプさんは子や孫と話し合うように、金正恩さんと語り合えば良いのです。教え、諭すのも年長者の役目です。

金正恩さんは今年(2017年)の元旦メッセージで珍しく次のように「自己批判」しました。http://kcyosaku.web.fc2.com/kju2017010100.html

「新しい一年が始まるこの場に立つと、私をかたく信じ、一心同体となって熱烈に支持してくれる、この世で一番素晴らしいわが人民を、どうすれば神聖に、より高くいただくことができるかという心配で心が重くなります。

いつも気持ちだけで、能力が追いつかないもどかしさと自責の念に駆られながら昨年を送りましたが、今年はいっそう奮発して全身全霊を打ち込み、人民のためにより多くの仕事をするつもりです。

私は、全人民が金日成(キム・イルソン)同志と金正日(キム・ジョンイル)同志を信頼し、前途を楽観して『われら幸せうたう』の歌をうたった時代を、過ぎ去った歴史のなかの瞬間ではなく、今日の現実にするために奮闘努力するつもりであり、一点のくもりもない清らかな心で人民に忠実に仕える人民の真の忠僕、忠実なしもべになることを、この元旦に厳かに盟約します。」

金正恩さんは2011年12月17日に金正日さんのあとを継いで5年余、権力を預かりました。「権力を預かる」というのは「全国民の命を預かる」ことです。その責任の重さが上記の「自己批判」を生みだしたのでしょう。

金正恩さんはまた「今年は、歴史的な7.4共同声明発表45周年と10.4宣言発表10周年に当たる年です。今年我々は、全民族が力を合わせて自主統一の大路を開かなければなりません。」と述べています。

「7.4共同声明」とは1972年7月4日に朝鮮の金日成国家主席が発表した声明です。「自主・平和・民族大団結による統一」の三原則を提起したものです。

「10.4宣言」とは2007年10月4日に韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と朝鮮の金正日国防委員長が発表した「南北関係の発展と平和繁栄のための宣言」です。停戦状態にある朝鮮戦争を終わらせるために朝鮮・韓国・米国・中国のうちの三者または四者の最高首脳会議を朝鮮半島で開くことを決めたものです。

金正恩さんはこの機会にまず朝鮮戦争を完全に終わらせたいと考えているようです。

私はトランプさんはこれに応ずべきであると考えています。そうすればトランプさんは67年ぶりに朝鮮半島に完全に平和を回復した「偉大な大統領」として歴史に残るでしょう。

朝鮮で再び戦争を起こさせてはなりません。前回の戦争は朝鮮半島内にとどまりましたが、次に起こる戦争は半島内にとまりません。日本を含め諸外国にも及びます

現代の戦争は極めて悲惨です。朝鮮半島問題を平和的に解決しなければなりません。