英国のヨーロッパ連合離脱に寄せて

中西 治

2016年6月23日に英国が国民投票でヨーロッパ連合 (EU)からの離脱を決定しました。この結果、第二次大戦後ヨーロッパで比較的順調に発展してきた統合が大きな試練に直面しています。日本、アジア、ヨーロッパ、米国などの株式市場で株価が大暴落しました。これからヨーロッパはどのようになるのでしょうか。世界はどのようになるのでしょうか。

今度の出来事の背景には多年にわたるフランス、ドイツなどのヨーロッパ大陸諸国とブリティッシュ諸島の英国との複雑な関係があります。そもそも「ブリティッシュ諸島はヨーロッパなのか否か」、「英国(連合王国)はヨーロッパなのか否か」の問題があります。英国は大西洋やヨーロッパの小さな島国ではありません。19世紀には「日が没することのない大英帝国(British Empire)」でした。1945年に第二次大戦が終わるまでそうでした。いまもその意識は残っています。

1939年9月にヒトラー・ドイツがポーランドに進撃し、ヨーロッパで第二次大戦が勃発したとき英国はフランスとともにドイツと戦いました。ところが1940年6月にドイツがパリを占領し、フランスのペタン政権がドイツに降伏したため英国はドイツと単独で戦うことになりました。英国はドイツからロンドン大空襲などの激しい攻撃を受け、大きな被害を被りました。1945年5月に英国はソヴェトおよび米国など連合国の支援でやっとドイツに勝利しました。

その英国のチャーチル首相が1945年2月にソヴェト・クリミア半島ヤルタでおこなわれたローズヴェルト米国大統領およびスターリン・ソヴェト首相との会談でド・ゴールのフランスのために大奮闘し、フランスを英国・米国・ソヴェト・中国と並ぶ世界の5大国の一つとしました。

第二次大戦後、英国の国際的地位と影響力は低下しました。ヨーロッパの統合は1952年のヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)の発足以来、フランスと西ドイツの主導で進められました。英国がヨーロッパ共同体(EC)に参加したのは1973年のことです。1993年に発足したヨーロッパ連合が1999年1月1日から使い始めた新しい通貨「ユーロ」を英国は今日まで使わず、英国独自の「ポンド」を使い続けました。誇り高い「大英帝国」の気位を示すものでした。

さらに近年ではEU諸国からの英国への移民が増え、英国民の生活が脅かされていると多くの英国人が感じるようになっていました。これがEU離脱の引き金となりました。英国のEU離脱は多くの英国人の積年の鬱憤をはらすものでした。

にもかかわらず、グローバリゼーション(地球の一体化)と地域の統合はこれからも続くでしょう。そのさい、その推進者は各地域の民衆がグローバリゼーションのなかで強く当該地域の自治を求めていることを理解し、それに適切に対応しなければなりません。

第二次大戦後70年、世界は大きく変わり始めています。ヨーロッパ中心の時代、米ソ中心の時代は終わりました。地球上の各地の国々、人々が声をあげ、行動するようになりました。

第一に中国が再び世界史の前面に躍り出ました。2015年の中国の名目国内総生産(GDP)は10兆9828億3000万USドル、米国の17兆9470億USドルについで世界第二位でした。日本は4兆1232億6000万USドル、第三位でした。

中国が主導するアジア・インフラ投資銀行(AIIB)は創設時の57か国から24か国増えて81か国になりました。さらに2016年中に100近くになると言われています。これは日米が主導するアジア開発銀行(ADB)の67か国・地域を大きく上回るものです。英国はAIIBの主要出資国であり、EU離脱後も引き続き重要な役割を果たすと言われています。

また中国を中心とする上海協力機構にはロシア、カザフ、キルギス、タジク、ウズベクの他、2017年にインドとパキスタンも参加します。さらにはイランも加盟すると言われています。

第二にロシアが再び国際的統合を積極的に進めています。

2014年7月15日から16日にかけてブラジルで開かれたブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなどBRICSの5か国首脳会議は資本金1000億ドルの「開発銀行」と運用資金1000億ドルの「外貨準備金プール」を設立しました。合わせて2000億ドルの資金は加盟国間のマクロ経済政策を調整する基礎となります。アルゼンチンがBRICSの6番目の加盟国になると言われています。

また2015年1月1日にロシア、カザフ、ベラルーシ、アルメニア、キルギスの5か国によるユーラシア経済連合が発足しました。プーチン大統領は大西洋に面するポルトガルのリスボンから日本海に面するロシア極東のウラジヴォストークに至る全ユーラシア大陸の統合を提唱しています。

第三に日本の安倍内閣は2015年に日本国を外国に自衛隊を派遣し、戦争をする国にしました。いかに美辞麗句をもって正当化しようとも、外国に軍隊を送るというのは外国に行って現地の人を殺すということです。

さらに重大なことはこの問題をめぐって日本の民衆の意見が分裂し、民衆の一部がこの政策を積極的に支持し、推進していることです。日本は1930年代以降に歩み、1945年に敗戦に至った道を再び歩み始めました。

2016年7月の参議院議員選挙をはじめとし、これからおこなわれる国政選挙はすべてきわめて重要です。戦争をする道を歩み続けるのか、平和の道に戻るのか、日本の主権者の見識が問われています。

次に出版する本『100年の回顧と100年の展望――ロシア10月革命100年に寄せて――(仮題)』の編集は順調に進んでいます。日本、中国、ロシア、米国などの同僚がすでに寄稿を快諾され、一部の原稿は届いています。私はこの本で平和な日本、平和な世界、平和な宇宙への道を提起します。

良き日々を!

『ビッグ・ヒストリーの実用: 自然・戦争・平和』出版

事務局

BH実用

中西治・責任編集『ビッグ・ヒストリーの実用: 自然・戦争・平和』地球宇宙平和研究所、2016年3月、定価(本体、価格2,000円+税)。

3冊目の単行本『ビッグ・ヒストリーの実用 ―自然・戦争・平和』を出版いたしました。

  • 日本・中国・米国の共同研究開始
  • 日本語、中国語、英語の論文。書評収録
  • 中西治、胡徳坤、バリー・ロドリーグ他
  • ビッグ・ヒストリー(大歴史)実用化の模索
  • ビッグ・ヒストリー × 地球変革、王朝の興亡、日中関係、イスラーム、近現代の戦争と平和

1. 目次

『ビッグ・ヒストリーの実用:自然・戦争・平和』出版にあたって ―三つの戦争の平和的解決のために/中西 治

論文

  1. 実用的ビッグ・ヒストリー:社会的意義、社会的必要性/バリー・ロドリーグ(辻村 伸雄訳)
  2. 李四光800年周期説についての発展的な考察/王 元
  3. 大きな歴史と中日関係の過去、現在、未来/胡 徳坤(黄 祥雲訳)
  4. 大きな歴史の角度から見た日本の勃興/熊 沛彪(葛 茜訳)
  5. 21世紀日中関係の現状と趨勢 ―日中友好の原点を探る/汪 鴻祥
  6. イスラームとビッグ・ヒストリー ー平和・共存のための新しい創世神話/岩木 秀樹
  7. ビッグ・ヒストリーの実用:戦争ではなく平和のために―「宇宙学(Universal Studies)」の確立と普及をめざして/中西 治

書評

  1. デイビッド・クリスチャン著、渡辺政隆訳『ビッグ・ヒストリー入門』/桜井 薫
  2. Barry Rodrigue, Leonid Grinin and Andrey Korotayev eds., From Big Bang to Galactic Civilization: Big History Anthology. Volume I: Our Place in the Universe: An Introduction to Big History./辻村 伸雄

あとがき

筆者・訳者紹介

2. お支払の代金と方法

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謹賀新年

中西 治

2016年の新春おめでとうございます。幸多かれとお祈り申し上げます。

日本は昨年、第二次大戦後70年にして「戦争をしない平和な国」から「戦争をする国」になりました。昨年は「戦争元年」、今年は「戦争二年」です。

戦争を前提として考え始めたとき、戦争はすでに始まっています。秘密保護法は「治安維持法」、一億総活躍は「国家総動員」です。

日米が参加する戦争は最初は小さいものでも、最後は「世界熱核戦争」になります。絶対に戦争を始めさせてはなりません。

それはまだできます。次の参議院議員選挙と衆議院議員選挙で「戦争勢力」を当選させなければ良いのです。主権者が問われています。責任重大です。

私は宇宙の始まりからの「ビッグ・ヒストリー(大きな歴史、大歴史)」の考えを、新しい学問「宇宙学」を世界に広めます。

今年3月に『ビッグ・ヒストリーの実用:アジアとイスラーム(仮題)』を出版します。日本・米国・中国の志を同じくする研究者の共同の成果です。

本年もよろしくお願いします。

ご健康とご活躍をお祈り申し上げます。

2016年元旦
中西 治

研究所のサーバー移転

事務局

サーバーのホスト会社の都合により、研究所のサーバーを移転しました。十分に注意して移行作業を行いましたが、ウェブサイトの表示やメールのやりとりに問題が発生する可能性もあります。お気づきの点がありましたら、恐縮ですが事務局までお知らせください。

参議院での安保関連法案の審議打ち切りによせて――日本は再び「戦争」への道を歩み始めました――

中西 治

2015(平成27)年9月17日午後4時30分頃、参議院特別委員会は安全保障関連法案についての審議を打ち切り、この法案を採択しました。そのやり方はひどいものでした。

私はこのときNHKテレビを見ていましたが、何が起こったのかさっぱり分かりませんでした。安倍さんや鴻池さんたちは「策を弄し」、「野党をペテンにかけ」、「うまくいった」と「ほくそ笑んでいた」ことでしょう。

このような荒っぽいやり方は「憲法違反の決定」を採択するのに「もっともふさわしかった」と言えるようです。

翌18日に参議院で「安倍首相への問責決議案」と「鴻池委員長への問責決議案」、衆議院で「安倍内閣不信任案」が否決されたあと、参議院本会議も安保関連法案の審議を打ち切り、2015年9月19日午前2時20分頃に同法案を投票総数238、賛成148、反対90で採択しました。

日本は「集団的自衛権」の名のもと他国から攻められてもいないのに外国に自衛隊を送り、「戦争」をする国になりました。

時あたかも1931(昭和6)年9月18日に「九一八事変(「満州事変」)」が勃発し、第二次大戦が始まってから84年、1945(昭和20)年9月2日に日本が「降伏文書」に調印し、第二次大戦が終結してから70年です。

日本は1889(明治22)年の大日本帝国憲法公布以後に歩んだ「戦争」への道を再び歩み始めました。新しい「戦前」が始まりました。この道を歩み続ければ、日本は再び「滅びる」でしょう。

なぜこうなったのでしょうか。

第一は有権者の四分の一(25%)の支持で三分の二(67%)以上の議席が得られる現在の衆議院議員選挙制度とくに小選挙区制の結果です。現在の衆議院議員の構成は選挙民の意志を正しく反映していません。

第二は安倍晋三首相が1868(明治元)年の明治維新以後の日本の戦争政策を基本的に「良し」とし、1945年以後の「戦後レジーム(体制)」を「悪」とし、その打破をめざしているからです。

第三は安倍首相のこの「政策」を公明党が支持し、自由民主党と連立内閣を組み、「集団的自衛権」の「旗振り役」となっているからです。

この「戦争」への道をどのようにすれば阻止できるのでしょうか。

現代の「戦争」は民衆の支持なしにできません。「平和」と「戦争」の問題を最終的に決定するのは民衆です。民衆が「平和」の側に立つのか、「戦争」の側に立つのかによって決まります。

1930年代に日本で「戦争」に反対する人々は支配者によって「弾圧」され、「投獄」され、「殺され」ました。民衆の多くは世界的な「経済恐慌」からの出口を「戦争」と「植民地」に求め、支配者の「戦争政策」を支持しました。このために日本は中国をはじめアジア太平洋の各地で戦争ができたのでした。

今また日本の民衆の一部が「戦争」を支持し始めています。同時に「平和と自由と民主主義を尊しとする人々」が増えています。私たちの研究所にも多数の「平和に徹する有能な人材」がいます。

このような人々がいっそう増え、毅然として「平和」の側に立つことによって「戦争」への道を阻止することができます。

「平和と民主主義をめざす民衆革命」はなお続きます。

21世紀は「地球社会」の各地で民衆が歴史の前面に登場し、積極的に活動し、「新しい歴史」を創り出していく時代です。

私たちの研究所に課せられている課題と使命はきわめて重いものです。

私はこの責務を果たすために努力します。

2015年9月19日

中西 治

12年ぶりに米国を訪ねて

中西 治

2015年8月10日から25日まで米国のハワイ州オアフ島とカリフォルニア州サンディエゴを旅してきました。1973年に初めて訪米して以来12回目の米国訪問です。2002年4月から2003年3月にかけての1年間の米国での研究以来12年ぶりです。

オアフ島到着の翌日、8月11日にホノルル市パールハーバー(真珠湾)の「アリゾナ記念館」を訪れました。二度目の訪問です。今回、日本人はあまり見かけませんでした。

ここには1941年12月7日(米国現地時間、日本時間12月8日)に日本海軍の不意打ち攻撃によって沈没した米国戦艦アリゾナ号と同艦とともに海中に没した乗組員1,177名がいまも艦内で「永遠の眠り」についています。私は「深い祈り」を捧げました。

「アリゾナ記念館」に行く船を待っていたとき、私と同じく「車いす」に乗って待っていた米国人から「どこから来たのか」と声をかけられました。「日本から」と答えると、相手の付き添いの人が「ジャップ」と小さな声で囁きました。初めて訪米した1973年にも「ジャップ」と呼ばれました。「ジャップ」は日本人に対する「蔑称」です。

私は2006年に南京の「侵華日軍南京大虐殺遭難同朋記念館」を訪れたときの私を見る中国人の厳しい冷たい目を思い出しました。

2015年8月14日に安倍晋三首相が発表した「戦後70年談話」をホノルル市内のホテルの日本語テレビで見ました。彼は戦前の日本が「世界の大勢を見失っていき」、「進むべき進路を誤り、戦争への道を進んで行きました」と言っていました。私は彼の言葉に「真実味」を感じませんでした。

それでも「いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」と述べ、さらに「いかなる紛争も、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである」と強調していましたので、そのあとの言葉に注目していました。出てきた言葉は「「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります」でした。

このような文脈のもとでは「積極的平和主義」は当然「積極的に紛争を平和的に解決する主義」になります。ところが彼の場合は違うのです。彼の「積極的平和主義」は「積極的に自衛隊を海外に派遣して力で紛争を解決する主義」です。

彼は人々が「平和」を願い、「戦争」を嫌っていることを知っています。だから「戦争法案」を「平和法案」と言い、「戦争主義」を「平和主義」と言っているのです。このような「言葉の詐術」を人々が信じると考えている人は「人々を愚かだと考えている人」です。

第二次大戦中に「東洋平和のためならば何で命が惜しかろう」と歌ったことを想起しています。「戦争」を始める人は「平和」のためと言います。

2週間、長男一家とともに過ごしました。「多くのエネルギーと生命」をもらいました。「新しい出発点」に立ちました。「新しい旅立ち」です。

特定非営利活動法人地球宇宙平和研究所メールマガジン『宇宙学』創刊号

事務局

目次
1.創刊の辞――「宇宙学」の創造をめざして――
2.「宇宙学」とは何か
3.編集方針

創刊の辞 ――「宇宙学」の創造をめざして――

私が「国際地球宇宙平和研究所」をつくったのは1986年12月30日であった。この研究所は2001年12月15日に「特定非営利活動法人地球宇宙平和研究所」に改組された。「宇宙」を冠した私たちの研究所はその前史を含め30年に近い歴史を持っている。

私は幼いころから最初の人間がいつどこで生まれたのであろうかと考えていた。神が人間をつくったという話を私は信じていなかった。ダーウィンの『種の起源』によって人間がサルから進化したことを知った。マルクスとエンゲルスの『共産党宣言』によって人間の社会が原始共同体から奴隷社会、封建社会、ブルジョア社会へと変化してきたことを知った。エンゲルスの『家族、私有財産および国家の起源』によって国家がどのようにしてできたのかを知った。さらにエンゲルスの『空想から科学への社会主義の発展』によって思想が変化・発展することを知った。

私はさらに地球と太陽と宇宙がどのようにしてできたのかに関心を持つようになった。その行きついた先が「ユニバーサル・ヒストリー(宇宙史)」であり、「ビッグ・ヒストリー(大きな歴史)」であり、「ユニバーサル・スタディーズ(宇宙学)」である。

「ユニバーサル・ヒストリー」は宇宙誕生以来の歴史を説くものである。3000年ほど前から語りつがれてきた『旧約聖書』は宇宙も人間も神がつくったとしていた。それは当時の人間がつくりだしたものであった。それがいまでは「ビッグ・バン(大爆発)」によって宇宙ができたと考えるようになっている。20世紀の人間がつくりだしたものである。

「神が宇宙をつくったとする論」も、「ビッグ・バン」論にもとづく「ビッグ・ヒストリー」も「ユニバーサル・ヒストリー」の「変種の一つ」である。「空想から科学へのユニバーサル・ヒストリーの発展」である。

「ユニバーサル・スタディーズ」は宇宙の誕生から現在および将来までをも対象とする新しい学問である。それは宇宙で起こるすべての事象を対象としている。

宇宙は壮大で多様である。「宇宙学」も壮大で多様である。それは科学技術が飛躍的に発展している21世紀の人間がつくりだす学問である。

特定非営利活動法人地球宇宙平和研究所はこのような新しい総合科学「宇宙学」をつくりだすためメールマガジン『宇宙学』を創刊する。

2015年8月15日

特定非営利活動法人地球宇宙平和研究所理事長 中西 治

「宇宙学」とは何か

中西 治

はじめに
私は歴史家である。
現代史の研究者である。ソヴェト期とポスト・ソヴェト期のロシアの歴史の専門家である。
国際関係論の研究者である。ロシアとアメリカ合衆国との関係の歴史の専門家である。
歴史家はすべてのことに関心を持っている。何についても論ずる。「宇宙学」についても論ずる。

「宇宙学」と「宇宙史」
「宇宙学(Universal Studies=ユニバーサル・スタディーズ)」は「宇宙(Universe=ユニバース)」にかかわるすべての問題を論ずる学問である。その中で入門的役割を果たすのは「宇宙史(Universal History=ユニバーサル・ヒストリーある。宇宙が誕生してから消滅するまでの歴史である。

「宇宙史」の時期区分
私は「宇宙史」を次の八つの時期に分けている。

第一は137億年前に「宇宙」ができてから46億年前に「太陽」ができ、45億年前に「地球」ができるまでである。

第二は36億年前に地球に最初の「生命体」「メタン細菌(原核生物)」が誕生し、18億5000万年前に「真核生物」に進化してから700万年前に「人類」が「チンパンジー」から枝分かれするまでである。この枝分かれのときが「人類の誕生」とされている。

第三は700万年前に誕生した人類「初期猿人」が「猿人」を経て240万年前に「原人」「ホモ・ハビリス(器用な人)」に進化するまでである。「ホモ・ハビリス」は「最初に石器をつくった人」であり、「最初のホモ(ヒト)属」である。

第四はこの「原人」が「旧人」「ホモ・ハイデルベルゲンシス(ハイデルベルクの人)」を経て20万年前に「新人」「ホモ・サピエンス(賢い人、知恵の人)」に進化するまでである。「ホモ・サピエンス」は創造性を持ち、精緻な石器を使い、多様な食物を利用した。

第五は「ホモ・サピエンス」が6万年前にアフリカからユーラシアに拡散し始めてから1万年以上前に南アメリカの最南端に到達するまでである。

第六は320万年前から断続的に続いていた氷河期が1万年前に終わり「農業革命」が始まってから「文明の誕生」、「コロンブスのアメリカ到達」などを経て18世紀に「工業革命」が始まるまでである。

第七は「工業革命」の開始から「人工衛星の打ち上げ」、「人間の月着陸」、「情報技術革命」を経て今日に至るまでである。

第八は現在から「宇宙がなくなる」までである。

これらの年数は概数として理解されたい。

「宇宙学」は「壮大にして多様な総合科学」
これらの問題を研究するために次のような学問が必要である。
「物理学」、「化学」、「天文学」、「気象学」、「地質学」、「地理学」、「生物学」、「人類学」、「分子生物学」、「考古学」、「人間学」(人間の思考、宗教、思想、哲学、文学、歴史、経済、政治、社会、医術、技術、芸術等々、人間に関するあらゆる学問)等である。
「宇宙学」はこれらの諸科学を統合した学問である。

「宇宙学」をどのようにしてつくりだすのか
このような「宇宙学」を一人でつくりだすことは困難である。しかし誰でもそれぞれの専門にもとづいて独自の「宇宙学」をつくりだすことができる。

たとえば私は歴史研究者として宇宙の誕生から消滅までの通史を研究している。とくに現代史の研究者として人類の誕生から今日までの「人類史」と「人間史」を「宇宙学」の観点から再構成することをめざしている。

私はすでに中西治著『ロシア革命・中国革命・9.11――宇宙地球史の中の20-21世紀――』南窓社、2011年3月30日、中西治編著『ビッグ・ヒストリー入門』地球宇宙平和研究所、2014年1月11日、中西治編著『ビッグ・ヒストリーと21世紀の国際秩序』地球宇宙平和研究所、2014年9月30日、などでこの研究を始めている。これらの研究を発展させれば「中西治の宇宙学」ができる。

多くの人々がそれぞれ関心を持つ問題について得意とする方法で研究を進めれば全体として「壮大にして多様な宇宙学」がつくりだされる。このメールマガジン『宇宙学』は志を同じくする人々がそれぞれの「宇宙学」をつくりだすのを助けるために創刊された。

人間は「サル」から進化した動物である
36億年前に地球に誕生した最初の生命体「メタン細菌」は「核膜」のない「原核生物」であった。「核膜」のある「真核生物」が誕生したのは18億5000万年前である。20億年に近い長い歳月がかかったのは、この間に地球全体が氷河でおおわれる「凍結状態」が続いたからである。この「真核生物」から「動物」と「植物」が生まれた。

「生物学的分類」によると、この「動物界」の中で「ヒト=人=Human」は次のように位置づけられている。

「真核生物」→「動物界」→「脊索動物門」→「哺乳鋼」→「霊長目」→「ヒト科」→「ヒト族」→「ヒト属」→「ヒト種」である。「霊長目(Primate)」には「サルとヒト」が含まれる。「サル目」とも言われる。人間は「サル」から「ヒト種」の「ホモ・サピエンス」に進化した動物である。

動物は食べなければ生きていけない
動物は食べなければ生きていけない。人類は最初、身近にいる魚や鳥などの動物や木の実、草などの植物をとって食べていた。「採取・狩猟」によってである。厳しい自然の中で生きるのは大変であった。人類同士が争い、勝ったものが負けたものを殺すこともあった。

「採取・狩猟」から「農耕・飼育」へ
人間は1万年前に「農耕・飼育」を始め、「定住」し、「食糧」を「生産」し、「貯蔵」できるようになった。「豊か」になった。「都市の文化=文明」が誕生した。「貧富」の格差が生じ、「支配する者」と「支配される者」が現れ、「国家」が生まれた。

「奴隷社会」から「封建社会」、「資本主義社会」、「混合社会」へ
土地をめぐって「争い」が起こり、「戦争」が始まった。勝ったものが負けたものの土地を奪い、負けたものを「奴隷」とし、労働力として利用するようになった。「奴隷社会」が出現した。その後、「封建社会」、「資本主義社会」となり、20世紀には「社会主義社会」が登場した。現在は資本主義と社会主義の「混合社会」である。21世紀に入り「9.11事件」が起こり、「イスラム国家」が出現している。新しい「国際主体」が登場した。
「人間が人間らしく生きよう」とする動きも強まっている。

なぜ「宇宙学」をつくり、発展させるのか
私が「宇宙学」を創造し、発展させるのは「人間」が「幸せ」に、「平和」に生きるためである。そのためにまず「衣食住」を確保し、「争い」を「話し合い」で解決しなければならない。同時に「人間」が「人間らしく生きる」ためには次のような「意識」を持つことも必要であろう。

第一は「人間」として「地球」に「生」を享けたことに感謝すること。

第二は「人間」は他の「動物」や「植物」の「生命」を食して生きていることを自覚すること。

第三は「人間」はすべて同じ「家族」であることを認識すること。

第四は「土地」は「誰のもの」でもなく、その地に存在する「すべてのもののもの」であることを理解すること。

私はこのような考えを「宇宙学」のなかで学んだ。この考えを広めたい。

メールマガジン『宇宙学』編集方針

特定非営利活動法人地球宇宙平和研究所は2015年8月15日にメールマガジン『宇宙学』を創刊する。

このメールマガジンは新しい学問「宇宙学」をつくりだすことを目的としている。

編集委員会は地球宇宙平和研究所理事全員13名によって組織し、編集委員長は中西治が担当する。

地球宇宙平和研究所の正会員、賛助会員、ユニバーサル・ユニバーシティー会員は誰でも自由に寄稿できる。

テーマも字数も自由である。長すぎるものは分載する。

編集委員会が「研究所の品位を傷つける」と認定するもの以外はすべて掲載する。

原稿料は支払わない。著作権は執筆者に属す。

さしあたって「不定期刊」であるが、できれば「月刊」、少なくとも「季刊」にしたい。

メールマガジン『宇宙学』は毎号、本研究所ホームページに掲載される。

2015年8月15日

特定非営利活動法人地球宇宙平和研究所理事長 中西 治

安保関連法案の衆議院通過にあたって

中西 治

昨日、2015年7月16日に多くの野党議員が退席するなか安保関連法案が衆議院を通過しました。

安倍晋三首相は閉会後、記者の質問に答えて「日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している」ことを強調していました。

このところ特に「厳しさ」が増しているのは日本と中国との関係です。

安倍さんは「尖閣諸島問題」を「米国」の「力」を借りて解決しようと考えているようですが、それは「不可能」です。

「尖閣諸島問題」は日中両国が「話し合い」で解決するより他に方法はありません。

歳月をかければ、米国とキューバの国交が正常化し、イランの核問題が解決するのです。

「万物は流転する」のです。

いま日本が為すべきことは「力」による解決ではありません。

「どのようにして日本を取り巻く安全保障環境を良くするのか」です。

私はとくに中国をはじめとする近隣諸国との相互理解と平和・友好のために努力します。

以上

安保関連法案の衆議院特別委員会での審議打ち切りによせて

中西 治

本日、2015年7月15日正午過ぎ、衆議院特別委員会は安全保障関連法案についての審議を打ち切りました。

法案は明16日の衆議院本会議で可決され、参議院に送付される予定です。

私はいま1960年5月19日の衆議院本会議で承認された「新しい日米安全保障条約」が6月19日に自然成立し、同月23日に岸信介首相が辞職した「1960年安保」の日々を思い出しています。

「1960年安保」は5月19 日から本格的に始まった「民衆革命」でした。

「2015年安保」も今日、7月15日から本格的に始まり、安倍晋三首相が辞めるまで続く「新しい民衆革命」となるでしょう。

ことはそれほど「重大」です。

第一は「集団的自衛権の行使」が「日本国憲法第九条」に明確に違反しているからです。

第二は日本が「中国、朝鮮、中東諸国」などから攻められてもいないのに、米国のために戦争をするのは、日本の「侵略」だからです。

第三はこれまで「平和」を掲げてきた民衆の一部が「集団的自衛権行使」の「旗振り役」をしていることです。「平和」が泣いています。このような人々はいずれ「歴史の厳しい審判」を受けることになるでしょう。

第四は政府与党の自由民主党と公明党が衆議院議員の数が多いことを笠に着て「驕って」いるからです。これは「虚構」です。

2014年12月の総選挙のときの日本の有権者数は1億人ほど、投票率は50%ほどでした。そのうち自民党と公明党に投票した人は合わせて小選挙区で2600万人ほど、比例区で2500万人ほどでした。有権者の25%ほどです。75%ほどの主権者を「侮って」はなりません。

為政者は主権者の声に謙虚に耳を傾け、学ばなければなりません。

憲法記念日に寄せて

中西 治

NHKの憲法記念日特集討論「安全保障法制を問う!憲法9条の下で自衛隊“活動拡大”の是非は」を見ました。各政党の幹部が参加し、発言していました。

1945年に第二次大戦が終わったとき、世界の多くの人々は戦争の惨禍を前にして、いかに時間がかかり、困難であっても、紛争問題は話し合いで解決しなければならないと考えました。それが国際連合憲章を生み、日本国憲法を生み出しました。

ドイツの哲学者カントは1795年に著した『永遠平和のために』で戦争をなくすためには戦争の手段である常備軍を廃止しなければならないと説きました。日本国憲法第9条はカントのこの考えを150年後に実現したものでした。それは人類の理想の実現でした。日本はこの憲法のもと70年間、戦争で一人も他国民を殺さず、自国民を死なせませんでした。日本が為すべきことはこの憲法の理念を世界に広めることです。

ところが、昨年7月に安倍内閣は「積極的平和主義」と称して「集団的自衛権」の名のもとに日本の自衛隊を国外に派遣し、米国などとともに戦争をできるようにしました。今日の討論を聞きながら、このような主張をする人々は「実際の戦争」を知らないし、「戦争の真の恐ろしさ」を知らないと思いました。このような主張をする人々は日本が中国や韓国や朝鮮などの隣国と戦争を始めたあと日本がどのようになると考えているのでしょうか。また、アフガニスタンやイラクやホルムズ海峡などに日本の自衛隊を派遣したあと日本はどのようになると考えているのでしょうか。

私は第二次大戦を垣間見ています。戦争は「戦争の論理」により拡大します。それは「地獄」への道です。私はこれを阻止するために全力を尽くします。