トランプ大統領の施政方針演説について

中西 治

2017年2月28日に米国のトランプ大統領が米国議会上下両院の合同会議で大統領就任後初めての施政方針演説をしました。

Trump address to joint session of Congress 2

トランプさんは演説の冒頭で米国において毎年2月に催されている「黒人歴史月間」が終わるにあたり、「今夜、私たちはこれまでの公民権運動の歩みとまだ残されている課題を思い起こしています」と述べ、「拍手」を受けました。

続いてトランプさんは「アメリカのそれぞれの世代は真実、自由、正義のたいまつを今日まで受け継いできました。そのたいまつはいま私たちの手にあります。私たちはそれを世界を照らすために使います。私は今晩ここに団結と強さのメッセージを伝えるためにいます。それは私が心からの思いを込めて送るメッセージです。米国の偉大さの新しい章がいま始まっています。私たちが今日、目にしているのはアメリカ精神の再生です」と述べました。

さらにトランプさん次のように語りました。

「9年後の2016年にアメリカ合衆国は建国250年ー独立宣言250年を祝います。それは世界史における偉大な里程標の一つです。アメリカは250年を迎えるときどのようになっているのでしょうか。どのような国を私たちは子供たちに残すのでしょうか。」

トランプさんは演説の開始と同時に聴衆の意識を1776年7月4日の独立宣言に戻し、自己をその思想の継承者として位置づけました。

トランプさんはこのあと米国の現状を次のように描きだしました。

  1. 多年にわたり米国の雇用や富が外国に流れ、国内の中間層が縮小しました。外国のプロジェクトには次々と融資し、建設してきましたが、米国のシカゴ、バルティモア、デトロイトなどの市の子供たちの運命は無視されてきました。他国の国境は守ってきましたが、自国の国境は開けたままでした。誰もが国境を越え、ドラッグ(薬物)が流れ込んできました。米国は中東だけでおよそ6兆ドルを使いましたが、米国内のインフラはぼろぼろでした。
  2.  労働人口に加わっていない米国人が9400万人います。4300万人を超える人々が貧しさのなかで暮らしています。そして4300万を超える米国人がフードスタンプ(食糧配給券)に頼っています。働き盛りの5人に1人が働いていません。
  3. 北アメリカ自由貿易協定(NAFTA)が承認されてから製造業の雇用の4分の1以上を失いました。中国が世界貿易機関(WTO)に加入してから6万以上の工場を失いました。2016年の米国の世界貿易赤字は8000億ドルに達しました。

トランプさんはこの現状に対し不満を持つ民衆を2016年の大統領選挙のときに自己の支持者に変えました。「地殻変動」が起こり、トランプさんが大統領となりました。

トランプさんは次のような施策を提起しました。

  1.  米国人の職を奪う「環太平洋経済連携協定(TPP)」からの撤退。
  2. 「暴力犯罪減少のためのタクスフォース」の創設。薬物の流入阻止、若者への汚染阻止。
  3. 「南側の国境沿いに大きな壁」を建設。
  4. 「過激なイスラムのテロリズム」から国を守るために強硬手段をとる。
  5. 「歴史的な税制改革」。大きな税率カット。企業への税率を減らし、中間層に対しても大型減税実施。
  6. 米国内のインフラに官民の資金で「1兆ドルを投資」し、数百万の新規雇用を生み出す。この取り組みの核となるのは「米国製品を買うこと」と「米国人を雇用すること」。
  7. 「オバマケア(オバマ前大統領の医療保険制度改革)」の廃止。新しい制度改革の実施。
  8. 数百万人ものアフリカ系米国人やラテン系米国人の子供たちを含む若者が「通学する学校をえらべるようにする資金」を提供。
  9. 警察官や保安官などの「法の執行者を支援」。
  10. 「犯罪被害者への支援」。
  11. 米国の安全を保持し、米軍に武器を提供するために「米国史上で最大級の国防費の増額」。

「大盤振る舞い」です。問題は「歴史的な税制改革」の中でこれらの施策が実現できるのか否かです。

トランプさんは対外政策について次のように述べました。

  1. 北大西洋条約機構(NATO)を強く支持します。しかし、私たちのパートナーは財政上の義務を負わなければなりません。
  2. NATOであれ、中東であれ、太平洋であれ、私たちのパートナーが戦略的、軍事的な作戦の中で直接的で意味ある役割を担い、そして応分の費用を負担することを期待します。
  3. 米国はすべての国が自国の未来図を描く権利を尊重します。私の仕事は世界を代表することではなく、アメリカ合衆国を代表することです。
  4. 私たちは過去の失敗から学ばなければなりません。戦争や破壊などの人道危機を解決する唯一の長期的方法は、自らの土地を追われた人々が再び安全に故郷に戻り、生活を再建する長い、長いプロセスを始められる状況をつくることです。
  5. 米国は利害関係を共有する新たな友人たちと出会い、新たな関係を築くことに前向きです。米国は過去の敵とも今は友人です。最も緊密な同盟国のいくつかとは、何十年も前、ひどい、ひどい戦争で敵国として戦いました。この歴史から私たちは、よりよい世界をつくれる可能性を信じることができるはずです。

最後にトランプさんは再び2026年の建国250年に戻り、次のように語りました。

建国100周年だった1876年に全土の市民がフィラデルフィアに集ったとき、アレキサンダー・グラハム・ベルが初めて電話を展示し、レミントンが最初のタイプライターを紹介し、トーマス・エジソンが自動電信と電気ペンを見せました。アメリカの250年に私たちの国はどのようにすばらしいものを知ることができるのでしょうか想像してください。

トランプさんは「もう一度、アメリカを信じて下さい」、「合衆国に神のご加護を!」との言葉で演説を終えました。

トランプさんはずいぶん「アメリカ合衆国大統領」らしくなりました。

ロシア、中国、朝鮮半島の問題については沈黙を守りました。

トランプさんの周りに知恵者がいることを感じました。

最大の問題は「米国史上最大級の国防費の増額」が実際にどのようになるのか、それが米国をどこへ導き、世界をどこへ導くのかです。

「国防費増額」は不況のときに考える政治家の「浅知恵」です。それが「戦争」へと導くのです。

真の政治家は「開戦・戦中・戦後」を考え、平和的に問題を解決することを考えるのです。

日本と米国は「同盟」ではない ―2017年2月10日の安倍・トランプ会談に寄せて

中西 治

2017年2月10日(日本時間11日未明)、日本の安倍晋三首相が米国の首都ワシントンでトランプ大統領と会談しました。

会談後の記者会見でトランプさんが「私たちの軍を受け入れてくれている日本国民に感謝したい」と語りました。

安倍さんは「強固な日米同盟がアジア太平洋地域の平和と繁栄と自由の礎である」と述べました。

1961年1月に制定された現行の「日米相互協力及び安全保障条約」第5条が尖閣諸島に適用されることが確認されました。

安倍さんは「日米同盟」、「日米同盟」と言いますが、本当に日本と米国の関係は「同盟」なのでしょうか。私はそう思いません。

このことを明らかにするためにここでは、幕末の「日米和親条約」の調印から今日までの日米関係を振り返り、現在を正確に把握し、将来を展望します。

第一に、私はこの期間を大きく次の3つの時期に分けます。

第1の時期は、1854年3月30 日(嘉永7年 (安政元年)3月3日)の「日本國米利堅合衆國和親條約」調印から明治維新、日清戦争、日露戦争を経て1911(明治44)年2月21日に「日米通商航海条約」が調印されるまでの57年間です。「不平等条約期」です。

第2の時期は、1911年2月から第一次大戦、ヴェルサイユ・ワシントン体制、世界経済恐慌、第二次大戦を経て1945年8月15日に日本がポツダム宣言受諾を発表するまでの34年間です。「帝国主義期」です。

第3の時期は、1945年8月15日から今日までの70年余です。私はこの時期をさらに次の4つに分けます。

① 1945年8月から1951年9月8日の「サンフランシスコ対日平和条約」と「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」調印までの6年余です。「米国をはじめとする連合国軍の占領期」です。

② 1951年9月から1961年1月の「日米相互協力・安保条約」締結までの10年弱です。「米国軍の駐留期」です。

③ 1961年1月から2015年9月19日に日本が集団的自衛権を行使するための一連の安全保障関連法を制定するまでの54年余です。「米国軍の駐留・日米相互協力期」です。

④ 2015年9月から今日までの1年余。「米国軍の駐留・日本の集団的自衛権行使期」です。

第二に、上記160年余の日米関係のうち最初の90年余(第1と第2の時期)は基本的に「対立関係」でした。

日本と米国はともに英国やフランスなどの先進国より遅れて近代化・工業化への道に入りました。日米両国が会いまみえた19世紀半ばに英国はすでに清国とのアヘン戦争に勝利し、中国の上海や南京などをはじめアジアの主要都市を支配していました。

19世紀後半から20世紀にかけて日本と米国が中国大陸に関心を持ったとき、残されていたのは中国東北から朝鮮半島にかけての地域でした。20世紀前半に日本はこれらの土地を奪取しました。最後は米国と戦い、人類史上最初の核戦争を体験しました。

第三に、上記160年余の後半70年余(第3の時期)は「米国が占領・駐留し、日本を軍事的に支配」しています。

2009年9月から2011年9月まで3年間続いた民主党政権が沖縄の米国軍普天間基地の辺野古への移転を阻止できなかったのは、その例です。鳩山由紀夫首相が沖縄に行き、県民に謝りましたが、日本国の最高指導者でさえ、その考えを実行できなかったのです。

2015年9月19日に一連の安全保障関連法が成立するまでは、「専守防衛」を掲げる日本の自衛隊は海外に行って武力行使することはありませんでした。

ところが、2016年3月29日に同関連法が施行されて以降、自衛隊が「集団的自衛権」を行使できるようになり、海外での武力行使や、米国軍など他国軍への後方支援が世界中で可能となりました。

2016 年11 月18日、アフリカ・南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されている陸上自衛隊に「駆けつけ警護」や「宿営地の共同警護」のために「武力の行使」を認める命令が防衛大臣から発せられました。

日本は「日本国憲法」に反して外国で戦争ができるようになりました。

第四に、現行の「日米相互協力・安保条約」は「同盟条約」であるのか、「否」かについてです。

この条約の第5条は次のように規定しています。

「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」

この条約は一見「相互防衛同盟条約」であるように見えますが、そうではありません。たとえば、本当の「相互防衛同盟条約」である「北大西洋条約」第5条は次のように規定しています。

「締約国は、ヨーロッパ又は北アメリカにおける締約国の一又は二以上に対する武力攻撃を、全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。従って、締約国は、右の武力攻撃が行われるときは、各締約国が、… 兵力の使用を含めてその必要と認める行動を、個別的に及び他の締約国と共同して、直ちに執ることによって、右の攻撃を受けた一以上の締約国を援助することに同意する。」

つまり、本当の「相互防衛同盟条約」は「他国に対する武力攻撃」を「自国に対する武力攻撃」とみなし、「直ちに兵力の使用を含めて必要と認める行動をとる」と規定しています。

ところが「日米相互協力・安保条約」で対象となるのは上記のように「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」だけです。「米国の施政の下にある領域」は対象外です。

なぜこのようになっているのでしょうか。それは1946年11月3日に公布され、1947年5月3日に施行された日本国憲法の第9条が「国権の発動たる戦争を永久に放棄し、国の交戦権を認めていない」からです。日本国憲法は締約国に対する攻撃を自国に対する攻撃とみなし、自動的に戦争に入るような「相互防衛同盟条約」の締結を認めていないからです。

第五に、「日米相互協力・安保条約」第5条が規定する「共通の危険に対処するように行動する」という「行動」とはいかなるものであるのかについてです。

同条約第5条が「尖閣諸島」に適用されることを最初に認めた米国大統領はオバマさんでした。彼は2014年4月24日に安倍首相との共同記者会見で次のように語りました。

「日本の安全保障に関する米国の条約上の義務に疑問の余地はなく、第5条は尖閣諸島を含む日本の施政下にあるすべての領域に適用されます。」

オバマさんはさらに日本の朝日新聞記者の質問に答え、「米国の立場は新しいものではなく、ヘーゲル国防長官とケリー国務長官が来日したときにも、米国の一貫した立場を示しました」と述べました。

また、米国のCNN記者の「大統領が言っているのは、中国が尖閣諸島に何らかの軍事侵攻を行った場合、米国が尖閣諸島を守るために軍事力の行使を考慮する、ということですか。」との質問にオバマさんは次のように答えました。

「私は安倍首相にも直接言いましたが、この問題をめぐって、日中間で対話と信頼構築ではなく、事態を悪化させる行為を続けることは、大きな誤りです。各国は国際法を遵守し、子供たちに向けて毒ガスを発射したり、他国の領土に侵入してはなりませんが、ある国がこうした規範に違反するたびに、米国は戦争に踏み切る、あるいは軍事的関与への準備を整えるべきであり、そうしないのは、米国が本気で規範を尊重していないということでしょうか。だとすれば、それは間違いです。」

オバマさんが言いたかったことは、「日米安保条約が締結されたのはオバマさんが生まれる前であり、第5条は日本の施政下にある領域を対象としてきた。だから私もそれを認めた。しかし、そこで起こる紛争に軍事的対応をするようなことはしない。私は問題を平和的に解決するために努力する。」ということでした。

オバマさんの「行動」は「軍事的対応」ではなく、「平和的解決の努力」なのです。

私は現実に尖閣諸島をめぐって何か事が起こったとき、米国は口では何か言うでしょうが、実際に事は起こさない、と考えています。それは米国がこの問題に武力介入すれば、中国との戦争、中国との核戦争になるからです。米国は日本の小さな島のために中国との核戦争を起こすほど愚かではありません。

それはトランプさんも同じです。トランプさんも安倍さんと同席した記者会見で中国との関係の重要性を強調していました。トランプさんも日本のために中国と戦争はしません。

オバマさんとトランプさんが恐れているのは、日本のために「中国との戦争」に巻き込まれることでしょう。

第六に、日本は今後どのような道を歩むのかについてです。

およそ160年間の日米関係を振り返ると、米国と付き合うのは「大変難しい」です。だから、「戦争」となったのです。

「戦争」は最初に仕掛けた方が悪いのです。米国人は「真珠湾奇襲攻撃」への「恨み」を忘れていません。日本人はその「罪」をいまも背負っています。

1951年の「日米安保条約」と1961年の「日米相互協力・安保条約」は、米国にとって「日本に米国に対する報復戦争をさせない条約」という側面もあるのです。

米国はいまも完全に日本を信頼していません。その証拠は米国が日本の国連安保理常任理事国入りを公然と支持しないことです。

戦争は悲惨です。人間と人間の殺し合いです。再び戦争をしてはなりません。

日本は韓国、朝鮮、中国、ロシア、米国など、すべての国と仲良くしなければなりません。

中国を仮想敵国とし、米国と組んで「抑止力」にしようと考えてはなりません。

他国との「同盟」に自国の運命を託すようなことをしてはなりません。

日本はかつて日独伊三国同盟にかけて米英オランダなどとの戦争を始めて失敗しました。

現行の「日米相互協力・安保条約」は最初の10年間の有効期間を1971年に終え、現在、日米いずれの締約国も、他方の締約国に対し、この条約を終了させる意思を通告すれば、1年後に終わります。

私はこの条約を廃棄し、新たに「日米平和・友好・協力条約」を結べば良いと考えています。

日本が世界に示すべき道は「軍事同盟」への道ではなく、すべての国との、すべての人との「平和・友好・協力」への道です。

ここまで書いて送信しようとしていたら、朝鮮の「ミサイル発射」のニュースが流れ、安倍さんとトランプさんが「日米同盟」を連呼しています。「胡散臭い」と思っています。

2016年の米国大統領選挙を振り返って

中西 治

2017年1月20日にドナルド・J.・トランプさんがアメリカ合衆国大統領に就任し、2016年の米国大統領選挙は終わりました。この機会に今回の選挙結果をまとめておきます。

第一は、トランプさんとヒラリーさんの得票数と選挙人 (Elector) 数です。

私は2016年11月8日におこなわれた有権者の投票による「米国大統領選挙最終結果」を同月15日に Breaking: Final Election 2016 Numbers! | Alternative に基づいて次のようにお知らせしました。

ドナルド・トランプさん 得票数62,972,226 選挙人数306人
ヒラリー・クリントンさん 得票数62,277,750 選挙人数232人

ところが、2016年12月19日に選挙人によっておこなわれた投票結果は 2016 Presidential General Election Results によると、次の通りでした。

ドナルド・トランプさん 得票数62,980,160 45.94% 選挙人数304人、56.5%
ヒラリー・クリントンさん 得票数65,845,063 48.03% 選挙人数227人、42.2%
誓約違反選挙人(Write-ins) 得票数 1,126,145 0.82% 選挙人数 7人、 1.3%

ヒラリーさんの得票が大幅に増え、トランプさんの得票を286万4903票もこえました。トランプさんの得票も少し増えていますが、ヒラリーさんも、トランプさんも、選挙人数を減らしています。どうしてこうなったのでしょうか。

それは2016年12月19日におこなわれ選挙人投票のさいに両者の選挙人から次のような誓約違反選挙人が出たからです。

トランプさん支持の共和党の2人の選挙人がトランプさんではなく、共和党のジョン・ケーシックさんとリバタリアン党のロン・ポールさんに投票しました。

ヒラリーさん支持の民主党の3人の選挙人がヒラリーさんではなく、共和党のコリン・パウエルさんに投票しました。同じく民主党の2人の選挙人がヒラリーさんではなく、無所属のフェイス・スポッテド・イーグルさんと民主党のバーニー・サンダースさんに投票しました。

この結果、トランプさんとヒラリーさんの得票数と得票率から誓約違反選挙人の得票数と得票率が減らされ、上記のように新たに誓約違反選挙人の得票数と得票率が記載されるようになりました。

ヒラリーさんとトランプさんの得票数が増えているのは、有権者投票によって選挙人が確定した後に上積みされた票がそれぞれの得票に加えられたからでしょう。

第二は、トランプさんとヒラリーさん以外の大統領候補についてです。

日本ではほとんど話題になりませんでしたが、今回の大統領選挙には共和党のトランプさんと民主党のヒラリーさんの他に次の人々が立候補していました。その得票数と得票率は下記の通りです。

リバタリアン党のゲーリー・ジョンソンさん、得票数4,488,931、得票率3.27%。
緑の党のジル・スタインさん、得票数1,457,050、得票率1.06%。
無所属のエヴァン・マクマリンさん、得票数728,830、得票率0.53%。

この他に憲法党のダレル・キャッスルさんや社会主義・解放党のグロリア・ラリバさんなども立候補していました。彼らの得票数は合計453,694、得票率は0.33%でした。

第三は、ヒラリーさんとトランプさんの得票をどのように評価するのかです。

2015年の米国の人口は3億2177万人。大統領選挙の選挙権は18歳以上、被選挙権は35歳以上です。

今回2016年の米国大統領選挙の投票者は1億3707万9873人でした。得票数と選挙人数はヒラリーさんが6584万票と227人、トランプさんが6298万票と304人、合わせて1億2882万票と531人でした。

この結果を民主党のオバマさんが勝利した前回および前々回の選挙結果と比較します。

前回2012年の大統領選挙のときの得票数と選挙人数は民主党のオバマさんが6591万票と332人、共和党のロムニーさんが6093万票が206人、合わせて1億2684万票と538人でした。

前々回2008年の大統領選挙のときの得票数と選挙人数は民主党のオバマさんが6949万票と365人、共和党のマッケインさんが5995万票と173人、合わせて1億2944万票と538人でした。

2008年にオバマさんが大量得票しました。得票数と選挙人数でのマッケインさんとの差は954万票と192人でした。オバマさんの圧勝でした。

2012年にオバマさんの得票数が2008年より358万票減り、ロムニーさんとの差は498万になりました。選挙人数もオバマさんは2008年より33人減り、ロムニーさんとの差が126人になりました。それでも大勝でした。

今回2016年のヒラリーさんの得票は2012年のオバマさんの得票より7万票少なく、トランプさんの得票は2012年のロムニーさんの得票より205万票増えました。この差が大変大きな変化をもたらしました。

ヒラリーさんがフロリダ(選挙人29人、以下同様)、ペンシルベニア(20人)、オハイオ(18人)、ミシガン(16人)、ウィスコンシン(10人)、アイオア(6人)などで負け、選挙人99人を失いました。致命的でした。

第四は、得票数で負けながら、選挙人数で勝ち、大統領になった人々についてです。

米国では1776年に独立宣言が発せられ、1789年4月にジョージ・ワシントンが対立候補なしに初代大統領に就任してから今日までに得票数で負けたが、選挙人数で勝って、大統領になった人は、今回を含めて5人います。

最初の人は1824年のジョン・クインシー・アダムスさんです。彼は同じ民主共和党のアンドリュー・ジャクソンさんよりも得票が少なかったのですが、選挙人数で勝ち、当選しました。

二人目は1876年の共和党のラザフォード・ヘイズさんです。同じように民主党のサミュエル・ティルデンキさんに勝ちました。

三人目は1888年の共和党のベンジャミン・ハリソンさんです。民主党のグロバー・クリーブランドさんより得票は9万票ほど少なかったのですが、選挙人数で233対168と勝り、当選しました。

四人目は2000年の共和党のジョージ・W.・ブッシュさんです。得票数では民主党のアル・ゴアさんより54万ほど少なかったのですが、選挙人数で 271対266と勝り、当選しました。

五人目は今回のトランプさんです。

第五は、アメリカ合衆国とはいかなる国かという問題です。

アメリカ合衆国(The United States of America)は一つの国家=州 (State)ではなく、複数の国家から成る同盟(Union)です。合衆国は当初13の国家から成る同盟でしたが、現在は50の国家から成る同盟です。

このことを法的に規定しているのが、1787年9月17日に制定されたアメリカ合衆国憲法(The Constitution of the United States)です。この憲法の「前文」は「われら合衆国の人民は、より完全な同盟(Union)を形成するために…、このアメリカ合衆国憲法を制定し、確定する」と宣言しています。

この憲法によると、合衆国の立法機関である議会(Congress)は上院(Senate)と下院(House of Representatives)から成っています。両院はいずれも国家=州を基盤としています。

上院は州の大きさと人口の多少に関係なく各州から2名ずつ選出される上院議員によって構成されています。当初、上院議員は「各州の立法部によって」6年を任期として選出されていましたが、1913年成立の憲法「修正第17条」により、この「各州の立法部によって」が「各州の州民によって」と修正されました。合衆国の上院議員は各州の議会ではなく、各州の州民によって直接選出されるようになりました。現在の上院議員は100名です。上院議長は合衆国副大統領がなり、可否同数のときを除き、表決には加わりません。

上院はアメリカ合衆国が平等な国家の同盟であることを反映する組織です。

下院は最初から「各州の州民が2年ごとに選出する」議員で組織され、下院議員の定数は人口3万人に対して1人の割合を超えてはならないとされています。但し、各々の州は少なくとも1人の下院議員を選出します。現在の合衆国下院議員は435名です。

下院は各同盟構成国家の人口を反映して組織されます。

次に合衆国の執行機関である大統領(President)と 副大統領(Vice President)の選出方法についてです。大統領と副大統領の任期はいずれも4年です。

最初に各州は、その立法部が定める方法により、その州から連邦議会に選出することのできる上院議員および下院議員の総数と同数の選挙人を任命します。但し、上院議員、下院議員および合衆国から報酬または信任を受けて官職にある人を選挙人に選任することはできません。

1961年成立の「修正第23条」により首都ワシントンからも選挙人3名を選出できるようになりました。

これにより現在の選挙人は上院議員数100名+下院議員数435名+首都ワシントン選出3名=538名となりました。

2015年の推計で米国最大の人口3914万人を擁するカリフォルニアは選挙人定員が55名ですが、最小の人口58万人のワイオミングは3人です。選挙人1人当たりの人口はカリフォルニアが71万人強に対してワイオミングは19万人強です。577万人の人口を擁するウィスコンシンは選挙人10人を選出しますが、選挙人1人当たりの人口は57万人強です。州の人口が少なければ少ないほど少ない有権者で1人の選挙人を選出できるようにしています。

これは大きな国と小さな国が同盟を結び、維持・発展させていくための大きな国の小さな国に対する配慮です。これがときには得票数では勝ったが、選挙人数では負け、大統領になれなかったという事態を生み出すのです。この配慮がなければ、大国が常に勝ち、小国は常に負けることになるのです。それでは同盟は長期に維持できません。ときには負けることも必要なのです。

一般に「アメリカ合衆国大統領選挙」と言われている2016年11月8日におこなわれた有権者投票はこの538名の選挙人を選出するための選挙でした。

選挙人が確定した後に選挙人によって大統領選挙が実施されます。これが2016年12月19日におこなわれた選挙です。この選挙をどのようにおこなうのかは、1804年成立の「修正第12条」によって次のように定められています。

選挙人は、各々の州で集会して、無記名投票により、大統領および副大統領を選出するための投票をおこないます。そのうち少なくとも1名は、選挙人と同じ州の住民であってはなりません。選挙人は、一の投票用紙に大統領として投票する者の氏名を記し、他の投票用紙に副大統領として投票する者の氏名を記します。選挙人は、大統領として得票したすべての者および各々の得票数、ならびに副大統領として得票したすべての者および各々の得票数を記した一覧表を作成し、これに署名し、認証した上で、封印をほどこして上院議長に宛てて、合衆国政府の所在地に送付します。

これを受け取った上院議長は上院議員および下院議員の出席の下に、すべての認証書を開封したのち、投票を計算します。大統領として最多数の投票を得た者の票数が選挙人総数の過半数に達しているときは、その者が大統領となります。

このように、アメリカ合衆国大統領の当選を決めるのは有権者の投票ではなくて、有権者の投票によって当選した選挙人の投票です。選挙人が誰に投票するのかは選挙人の権限に属します。

今回はここまでにしておきます。

トランプさんの米大統領就任に寄せて

中西 治

2017年1月20日(日本時間21日未明)にドナルド・J.・トランプさんが米国の大統領に就任しました。

彼は就任演説で「権力をワシントンD.C.から移し、アメリカ人民に戻す」と宣言し、「アメリカ第一をめざす新しいビジョンにもとづいて政治をおこなう」ことを明らかにしました。

また「古い同盟を補強し、新しい同盟を形成し、ラジカルなイスラム・テロリズムに対して文明世界を結集する」と述べ、「アメリカを再び偉大にする」よう呼びかけました。

トランプさんが大統領に就任した直後にホワイトハウスのホームページに発表された「アメリカ第一の対外政策」によると、米国はその第一歩としてTPP(環太平洋パートナーシップ) 協定から離脱し、NAFTA(北アメリカ自由貿易協定)についてもカナダおよびメキシコと再交渉し、両国が再交渉を拒否する場合にはNAFTAから離脱することになりました。

トランプさんは「言うだけではなく、言ったことを実行する」ようです。

首都ワシントンではトランプさんの大統領就任に抗議する民衆と警察との衝突事件が起こっています。

米国は変わり始めました。日本も世界も変わるでしょう。問題は良くなるのか、悪くなるのか、どう変わるのかです。

私たちの研究所は30年の歴史を持つ世界で唯一の「地球と宇宙の平和」をめざす研究所です。日本と世界が良くなるよう積極的に発言し、行動します。

2017年謹賀新年

中西 治

2017年の新春をお慶び申し上げます

今年はロシア10月革命100年です。9月に新しい本『100年の回顧と100年の展望』を特定非営利活動法人地球宇宙平和研究所から出版します。

ロシア科学アカデミー東洋学研究所のナザレチャン教授からすでにロシア語論文2本、うち1本は英語論文も送られてきています。木村英亮さんと岩木秀樹さんからも日本語論文が寄せられています。

ナザレチャン論文の日本語訳は桜井薫さんが担当し、翻訳をほぼ終えています。他に中国、米国、日本などの同僚が寄稿します。私も書きます。辻村伸雄さんが装丁を担当します。

2017年9月26日から28日までモスクワ大学グローバル・プロセスズ学部で第3回国際シンポジウム「ビッグ・ヒストリーとグローバル的進化」が開催されます。

私も参加します。私たちの上記の本を紹介し、「ロシア10月革命と日本における宇宙学研究」について報告します。

私の「宇宙学」は『旧約聖書』「創世記」の宇宙観も、「ビッグ・バン」による宇宙誕生の宇宙観も含みます。私はこれを「空想」から「科学」への「宇宙学」の発展として捉えています。科学技術の発展とともにさらに新しい宇宙観が登場するでしょう。

私はいずれ独自の宇宙観を提起したいと思っています。そのためにも私は地球的・宇宙的な大学を創りたいと願っています。

中国では「木を育てるのに10年、人を育てるのに100年」かかると言われています。教育は100年の大計です。

私の構想の実現は1000年の大事業になるでしょう。

ご健勝をお祈り申し上げます。

2017年元旦

中西 治

プーチン大統領の来日に寄せて

中西 治

2016年12月15 日は私たちの研究所の設立15周年記念日でした。

この日にロシアのプーチン大統領が日本を訪れ、山口県と東京都で安倍晋三首相と会談したあと16日午後、東京で共同記者会見をしました。この会見をテレビで見た感想を書きます。

第一は、安倍首相は態度も言葉ももっと謙虚でないといけません。はるばる遠くからきた客人に「ウラジーミル、君は」などという横柄な言葉を使ってはなりません。これは目下の人に対する言葉です。先日もプーチンさんとロシア人記者団との会見で一人のロシア人記者が安倍さんのこの言葉を問題にしていました。プーチンさんは安倍さんを擁護し、この記者をなだめていました。ファストネームで呼び、親愛の情を示すアメリカ人とロシア人は違います。

第二は、歴史についての無知です。プーチンさんは日本人記者の質問に答えて明治以降のクリル(千島)列島とサハリン(樺太)の歴史を語ろうとしましたが、途中でやめました。

かわりに私の考えを書きます。

私は、北方領土問題の出発点は1945年8月15日に日本が受諾した「ポツダム宣言」にある、と考えています。この宣言は「日本国の主権は、本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に局限せらるべし」と述べています。つまり、この段階で日本の主権下に置かれていたのは大きな四つの島だけであり、その他の小さな島は「連合国が日本の島だ」と決定してくれなければ日本の領土ではなかったのです。

私は当時、中学1年生でしたが、「良くぞ4島が残った」と思っていました。それは戦争中に日本がシンガポールを占領し、「昭南島」と命名したとき、私たち国民学校(小学校)の児童はすぐに島の名前を書き替えさせられました。私は戦争に勝ってとったものは、すぐ、勝った国のものになると思っていました。だから、負ければ、とられるのは当たり前と思っていました。

1951年9月8日に日本国が連合国とサンフランシスコで締結した「平和条約」は「日本国は、千島列島並びに日本国が1905年9月5日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」と規定していました。

この放棄した「千島列島」に北千島と南千島(択捉島と国後島)が含まれていることは当時の西村熊雄政府委員(外務省条約局長)も1951年10月19日の国会での答弁で認めていました。これが当時の日本人のほぼ一致した認識でした。つまり、択捉島と国後島は放棄したのです。この一度「放棄した」島々を後に「放棄していない」と言い出したために日本の主張は国際的にも説得力がないのです。

1956年10月19日に署名された「日ソ共同宣言」においてソヴェトは平和条約の締結後に歯舞諸島と色丹島を日本に引き渡すことに同意しました。これはソヴェトがこれらの島々を千島列島の一部ではなく、北海道の延長線上にある島々と認識した結果であると私は考えています。

それから60年経ちました。

第三は、なぜこのように長い間、日ソ・日ロ交渉が停滞したのかです。それは米国が日ソ交渉の妥結に横やりを入れてきたからです。1956年の日ソ交渉のさい日本は一時、歯舞諸島と色丹島の返還だけで妥協しようか考えたときがありました。これを知った米国のダレス国務長官が、もし日本がそれで妥結するなら、米国は沖縄を返さないと言ってきたのです。これで日本は日ソ交渉を妥結できなくなりました。日ロ交渉も進まなかったのです。いまロシアが恐れているのは、歯舞諸島と色丹島を日本に引き渡したあと、そこに米軍が駐留し、基地をつくることです。択捉島と国後島は歯舞諸島と色丹島よりもはるかに重要な戦略拠点です。ロシアはこれも日本に引き渡すわけにはいかないのです。

第四は、私は今回、日ロ両国が歯舞・色丹・択捉・国後での共同経済活動の実施について交渉の開始を決めたことを歓迎しています。私は交渉の前途を必ずしも楽観視していませんが、この交渉が成功し、50年、100年と日本人とロシア人が共に働くことになれば、問題は自ずと解決するだろうと考えています。

もともと地球上には一人の人間もおらず、土地は誰のものでもなく、どこの国のものでもなかったのです。固有の土地などはなかったのです。必要とする人々が仲良くいっしょに利用すれば良いのです。

私はすべての係争地は係争国で共同利用すれば良いと考えています

次は日米関係について論じます。

 

安倍・トランプ会談に寄せて

中西 治

安倍晋三首相が急遽ニューヨークを訪れ、2016年11月17日夕方(日本時間18日朝)、
他の国の最高指導者に先んじてトランプ次期米国大統領と会いました。

テレビを見ていて、急に「関ヶ原の戦い」を思い出しました。

勝つだろうと思っていた石田三成が負け、負けるだろうと思っていた徳川家康が勝っ
たことを知った地方の小大名が急いで徳川家康のもとに馳せ参じ、お家安泰のために
忠誠を誓っている様子が思い浮かびました。「おお、愛(う)い奴じゃ」と家康が
言ったかどうか分かりません。

私は、いかにも安倍さんらしいな、と思いながら、同時に、トランプさんはこのよう
な人間をどのように評価しているのだろうか、と考えました。

安倍さんとトランプさんは「似た人間」です。ともに既成の秩序に反対しています。
私はこのような人物が出てきたとき、言葉ではなく、実際に民衆をどこへ連れて行こ
うとしているのかで判断します。

安倍さんは第二次大戦後70年間続いてきた日本の「平和憲法体制」に反対し、日本を
「戦争のできない国」から「戦争のできる国」にしました。奇しくも同じ18日に日本
の防衛大臣が南スーダンに派遣される陸上自衛隊の部隊に対し「駆けつけ警護」や
「宿営地の共同防護」のために「武力の行使」を認める命令を発しました。日本は
「戦争をする国」になりました。安倍さんは日本人を戦争へと導いています。

トランプさんはこれまでの民主党や共和党と違って「米国はもはや世界の警察の役割
を果たせない」と言い、これまでの体制を否定しています。私はこれは正しく、その
通りだと思っています。

トランプさんはまた「日本は米国軍の駐留費用を全額負担せよ」、「負担しないなら
米国軍を引き上げる」と言っています。トランプさんは日本に「日本は日本で守
れ」、「日本は核武装しろ」などと言っていますが、米国人に「戦え」と言っていま
せん。

私は、このさい、日本国内でも米国軍の駐留問題を検討すべきであると考えていま
す。講和条約が発効すると、外国軍はすべて他国から引き上げるのが常識です。若い
人は生まれた時から米国軍が日本に駐留しているから、駐留しているのが当たり前と
思っているようですが、それは当たり前ではなく、居ないのが当たり前なのです。私
は米国軍が全員、日本から引き上げれば良いと考えています。

北東アジアの最大の問題は「尖閣諸島問題」ではありません。「朝鮮戦争問題」で
す。

前者は日中両国が話し合いで解決すれば良いことです。、後者は韓国と朝鮮が話し
合って決めれば良いことです。中国、米国、日本はこれを助ければ良いのです。

「尖閣諸島問題」も、「朝鮮戦争問題」も、中国と米国が核ミサイル戦争を賭けるべ
き問題ではありません。両国の核心的利益にかかわる問題ではありません。

次は日ロ関係と領土問題について書きます。

2016年の米国大統領選挙を終えて

中西 治

2016年の米国大統領選挙最終結果が出ました。

Breaking: Final Election 2016 Numbers! | Alternative – Before It’s News によると、結果は次の通りです。

ドナルド・トランプさん  得票数62,972,226 選挙人数306人
ヒラリー・クリントンさん 得票数62,277,750 選挙人数232人

トランプさんが得票でも選挙人でも多数を占めました。いよいよ米国で「オバマ時代」が終わり、「トランプ時代」が始まります。

この機会に、これから米国・世界・地球・宇宙はどうなるのかについて考えてみたいと思います。順序を逆にし、宇宙と地球がどうなるのかから始めます。

クリスチャンとスピールの「宇宙の未来年表」やNewton別冊『大宇宙――完全版――』によると、宇宙はいずれなくなります。そのなくなる時期は「10の10乗の76乗年後」とか、「10の100乗年後」とか様々です。「10の10乗」が「100億年」、「10の14乗」が「100兆年」ですから、いずれにしても、21世紀に生きる私たちが宇宙の消滅を心配する必要はありません。地球を含む太陽系がなくなるのは50億年後から80億年後と言われています。これもせいぜい100年しか生きない私たちが心配することもないでしょう。

宇宙と地球の誕生・消滅は直接トランプさんと関係ありません。にもかかわず、私がこのことから論じ始めるのは「万物」を「変化」するものとして捉え、「宇宙」の歴史の中に位置づけようとするからです。

次は世界と米国はどうなるのかです。

前記事の「トランプ米新政権の対外政策について」で指摘したように、現在は第二次大戦後の「米ソ中心時代」から「多中心時代」への移行期です。この「多中心時代」がどのような「多中心」になるのかです。

2050年と2100年に世界がどのようになるのかについてはすでに相当わかっています。

『国際連合経済社会局世界人口推計2015年版』によると、世界人口は2015年の73億人から2050年に97億人、2100年に112億人に増えます。

2015年の国別人口の第1位は中国13億7604万人、第2位はインド13億1105万人、第3位は米国3億2177万人、第4位はインドネシア2億5756万人、第5位はブラジル2億0784万人、以下、パキスタン、ナイジェリア、バングラデシュ、ロシア、メキシコでした。日本は1億2657万人、第11位でした。

これが35年後の2050年に、第1位はインド17億0500万人、第2位は中国13億4800万人、第3位はナイジェリア3億9900万人、第4位は米国3億8900万人、第5位はインドネシア3億2100万人、以下、パキスタン、ブラジル、バングラデシュ、コンゴ民主共和国、エチオピアとなります。日本は1億0700万人、第17位です。

85年後の2100年には、第1位はインド16億6000万人、第2位は中国10億0400万人、第3位はナイジェリア7億5200万人、第4位は米国4億5000万人、第5位はコンゴ民主共和国3億8900万人、以下、パキスタン、インドネシア、タンザニア連合共和国、エチオピア、ニジェールとなります。日本は8300万人、第30位です。

人口について、現在、中国が第1位、インドが第2位ですが、2050年と2100年には中国とインドが入れ替わり、インドが第1位になります。現在、米国は第3位ですが、2050年と2100年にはナイジェリアに抜かれて第4位になります。

次に2015年と2050年の主要国の国内総生産(GDP)を見ましょう。

2015年の名目GDP(米国ドル)は「世界GDPランキングベスト(20位)2015年最新版」と“World GDP Ranking 2015 | Data and Charts” によると、第1位は米国17兆9470億、第2位は中国10兆9828億、第3位は日本4兆1232億、第4位はドイツ3兆3576億、第5位は英国2兆8493億、第6位はフランス2兆4215億、第7位はインド2兆0907億、第8位はイタリア1兆8157億、第9位はブラジル1兆7725億、第10位はカナダ1兆5523億でした。

PwC調査レポート『2050年の世界』によると、2050年の主要国のGDPは購買力平価(PPP)を2014年ベースの米ドルに換算して、第1位は中国61兆0790億、第2位はインド42兆2050億、第3位は米国41兆3840億、第4位はインドネシア12兆2100億、第5位はブラジル9兆1640億、第6位はメキシコ8兆0140億、第7位は日本7兆9140億、第8位はロシア7兆5750億、第9位はナイジェリア7兆3450億、第10位はドイツ6兆3380億となります。

比較の基準が「名目」GDPと「購買力平価」GDPで異なりますので、単純に比較できませんが、それでも米国、日本、ドイツ、英国、フランス、イタリア、カナダなどの西側先進国が2050年に2015年の上位から下位に落ち、中国、インド、インドネシア、ブラジル、メキシコ、ナイジェリアなどのアジア・ラテンアメリカ・アフリカの新興国が上位に立つことがわかります。ロシアも12位から8位に上がります。

2100年のGDP予想値はまだ出ていませんが、人口増とGDP増はほぼ一致します。人間は消費者であると同時に生産者です。人間が知恵と知識と技術を身に着ければ、偉大な生産者になります。21世紀後半から22世紀にかけてインド、中国、パキスタン、インドネシアなどのアジア諸国、ナイジェリア、コンゴ、タンザニア、エチオピア、ニジェールなどのアフリカ諸国が歴史の前面に登場してきます。

つまり、前述の「多中心時代」の中でBRICS (ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)・EU(ドイツをはじめとするヨーロッパ連合)・USA(アメリカ合衆国)などが林立するようになります。もはや「米ソ中心時代」ではないのです。ましてや「米国中心時代」ではないのです。

米国人のこれに対する焦燥感と貧富の格差増大に対する怒りがトランプさんを米国大統領にしました。トランプさんは米国人の雇用と生活を守るためにムスリム(イスラーム教徒)の入国拒否とか、追い出しとか、メキシコとの間に壁をつくるとか言っていますが、実際にこれをおこなえば、米国はいっそう困難な状況になるでしょう。

米国は建国以来「移民」の国です。そのおかげで発展してきました。いまのところ2015年の人口3億2200万人は2050年に3億8900万人、2100年に4億5000万人に増えていくと予想されています。しかし、トランプさんが移民の阻止とか、追い出しをすれば、人口はどうなるでしょうか。2050年に購買力平価GDPで中国とインドについで第3位を維持できるでしょうか。

ついでながら、英国の人口は2015年の6471万人から2050年に7536万人、2100年に8237万人に増え、フランスも6439万人から7113万人、7599万人に増えます。他方、ドイツは2015年の8068万人から2050年に7451万人、2100年に6324万人に減り、ロシアも1億4300万人から1億2900万人、1億1700万人に減ります。

日本の人口も1億2700万人から1億0700万人、8300万人に減ります。日本の人口減は深刻です。日本のこと、日本と米国との関係については別に書きます。

トランプ米新政権の対外政策について

中西 治

米国でトランプ新政権が来年2017年1月から正式に発足します。選挙運動中にトランプさんは日本との関係についてもいろいろとしゃべりました。これから世界はどうなるのでしょうか。この問題について簡単に書いておきます。

まず、第二次大戦終結から今日までの国際情勢の変化を振り返ります。

第二次大戦の結果、米国とソヴェトが世界的大国となりました。アメリカとロシアが世界史の前面に登場したのはこれが初めてです。「米ソ中心時代」が始まりました。

この「米ソ中心体制」は「朝鮮戦争・ヴェトナム戦争・アフガニスタン戦争」によって揺らぎました。1991年12月にソヴェトは解体しました。米国の国際的威信と影響力も低下しました。私は第二次大戦後の米ソを中心とした「国際秩序」を崩壊させたこれら一連の戦争を一括して「第三次大戦」と規定しています。

ソヴェト解体から四半世紀経ち世界は変わりました。現在、世界にはドイツ・フランスを中心とする「ヨーロッパ連合(EU)」、ロシアを中心とする「ユーラシア経済連合」、中国を中心とする「上海協力機構」、ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカなど5か国の「BRICS」などが存在します。「多中心時代」の到来です。

米国は「ソヴェト解体」に幻惑され、「米国中心時代」が到来したかのごとき「錯覚」をいだいたようです。

米国は2001年の9.11事件に対してアフガニスタンとイラクへの出兵で応え、失敗しました。にもかかわず、米国はいまもシリアをはじめとする中東で「世界の警察官」の役割を果たそうとしています。

これに対してトランプさんは米国はもはや「世界の警察官の役割を果たせない」と言いました。私も「その通り」だと思います。しかし、オバマさんも、ヒラリー・クリントンさんもこれは言えません。彼らはこれを言い、実行してきたからです。

トランプさんがこれを言えたのは、彼が安全保障問題の「素人」だからです。

「戦争」と「平和」の問題では「素人」の言葉に「真理」があります。「屁理屈」をこねないからです。戦場で死ぬ多くは「素人」の「兵隊」です。「戦争ごっこ好き」の「玄人」は実際に戦争が起こったときには戦場から遠く離れた机の上で「戦争ごっこ」をしています。「本当に戦争の恐ろしさ、悲惨さを知っている」「玄人」は戦争に「反対」です。

日本は戦後一貫して「連合国軍の占領下」、「米国軍の駐留下」にありました。戦後71年、そろそろ「外国軍の駐留をやめさせるべきとき」です。トランプさんは良いきっかけをつくってくれました。大いに「素人談義」をしましょう。「素人談義」も主権者の半分をこえれば、大きな力をもつのです。

米国大統領選挙で「総得票」で勝っても「選挙人」で負ける場合があるのは、アメリカ合衆国(United States of America)が各独立国家「State(国)」の「United(結合した)」「国家連合」、「国家同盟」であるからです。各独立国家(州)に選挙人の選出権があります。各州が独自の州兵を持っています。

トランプ劇場開幕中

中西 治

トランプ劇場は今回の米国大統領選挙運動開始とともに始まっていました。私はそれに気づいていませんでした。

本日、2016年11月9日早暁(日本時間夕方)に共和党大統領候補トランプさんが民主党大統領候補ヒラリー・クリントンさんからの祝いの電話をうけ、米国大統領当選演説をしました。このとき、はっと気づきました。その「演説」がこれまでの「まともでない演説」と比べて、あまりにもよくできた「まともな演説」であったからです。これは良く準備された「劇」だ、「トランプ劇場」だと思いました。

8年前の大統領選挙で米国の有権者は民主党のオバマさんを大統領にし、4年前の選挙で再選しました。この8年間のオバマ大統領の政治は選挙民にとって「満足」すべきものではありませんでした。

トランプさんは選挙民のこの「不満」を敏感に捉え、「貧困」と「格差」を厳しく批判しました。外交問題でも「思い切った」ことを言いました。これが有権者の「心」をつかまえました。米国の有権者は「何をするのか分からない」トランプさんに「賭け」ました。これが「成功」しました。

トランプさんは当選と同時に「まともな演説」をする「大統領」に変わりました。トランプさんは「豹変」し、「序幕」は終わりました。「第一幕」ではどのように演じるでしょうか。トランプさんが「名優」か「大根役者」かは今後の「舞台」によって決まります。

私はかつてヒラリー・クリントンさんが米国史上最初の女性大統領になるだろうと思っていました。2002年9月11日にニューヨークの9.11事件の跡地近くでヒラリー・クリントン上院議員と会い、挨拶しました。

ヒラリー・クリントンさんの今回の敗因は彼女の性格と行動にもあります。旧来の民主党の支持者がヒラリー・クリントンさんから離れました。これが致命傷です。トランプさんの勝因は「敵失」にもあります。

「人の世」は時として今回のような重要な「舞台」を生み出します。これが歴史的な転換をもたらす「大場面」になるかも知れません。「出番」がきたら私たちも「舞台」に上がりましょう。楽しみながら、世の中を変えましょう。